「ケータイ対応」と「パートナー」が関門に
これらの条件の中で検討を進め、最終的にZCSが候補として有力になる。ただし、実際に導入が決定するまでには、まだいくつかクリアすべき課題が残っていた。
森河氏と松﨑氏は、ZCSのウェブメール機能、カレンダー機能が優れている点、「Zimlet」と呼ばれるアドオン開発による機能拡張が容易な点、オープンソースの定評あるコンポーネントをベースにしており、カスタマイズや運用面での安心感がある点などを高く評価していた。しかし、「日本語ローカライズ」と「携帯電話からのアクセス」の2点が問題になったという。
Zimbraのメールシステムについては、フィードパスがSaaS形式でのホスティングサービス「feedpath Zebra」を展開しており、日本語での運用に関して実績があることは確認された。ただし、日本の携帯電話キャリアへの対応はZimbra自体では行っていなかった。これについては、日本語版独自のモジュールを開発して組み込むことで解決を図ることになった。
そして最後に残った関門が「パートナーのコミット」だった。実は、日本の教育機関において、インハウスでのZCS導入を行った事例はこれまでなかったのだ。
「教育機関での先行事例が多かったのは“ActiveMail”や“DEEPMail”。実際、多くのインテグレーターに相談をしてみたが、初めての事例となるZCSでの構築を引き受けてくれるところはなかなかなかった」(松﨑氏)
最終的に、松﨑氏や委員会の熱意に、キヤノンITソリューションズやサン・マイクロシステムズ、フィードパスが応える形で、国内初の教育機関におけるインハウスでのZCS導入が実現する。
松﨑氏は、「今や組織にとってメールはクリティカルなシステム。導入や運用管理にあたって失敗は許されない。いくらユーザーが導入を望んでも、引き受けてくれるパートナーがいなければ不可能なことは分かっていた。パートナーに恵まれた点はありがたかった」と述懐する。