経済が好調な時でさえ、情報システム部門には常にコスト削減圧力が容赦なく降りかかってくる。これが現在のような、円高・金融危機・景気後退が同時進行で加速している、いわゆる「100年に一度」の経済状況ともなれば、その圧力は凄まじいものであることは誰の目にも明らかだろう。
しかし、これまでにないコスト削減圧力をかけられても、情報システム部門は企業の成長を考えた戦略的なIT投資を打ち出していく必要がある。そうした視点から注目すべきサービスがこの1月から始まった。
システム企画開発のフレパー・ネットワークスは1月7日、インターネットデータセンター事業者(iDC)やシステムインテグレーター(SIer)を対象に、IBMのメインフレームを活用した仮想データセンター事業「ZDC」を始めたことを発表した。同社では、iDCとSIer向けにZDCの無料説明会を1月20日から毎月1回程度、定期的に開催することをあわせて発表している。
フレパーが今回開始したZDCは、IBMのハイエンドメインフレーム「IBM System z10 Enterprise Class」(System z10 EC)を、iDCやSIerの顧客であるユーザー企業に貸し出すというものだ。System z10 ECの仮想化技術を活用して、1台のSystem z10 ECの中にユーザー企業ごとの専用環境を構築することができる。
ZDCの場合、System z10 ECをベースにしてシステムを構築し、監視もフレパーが行うが、これに同社独自の遠隔複数拠点データ保管サービス「DIGITAL DATA BANK」と広域負荷分散配信ストレージサービス「DIGITAL DATA DAM」を組み合わせて利用することができる。こうしたシステム構成を取ることで、ユーザー企業はインターネット越しに企業独自のシステムを利用することができる。
ここで注目したいのが、System z10 ECに搭載されている、IBM製メインフレームにこれまで長年培われてきた仮想化技術である。ソフトウェア上での仮想化はもちろん、ハードウェア上での仮想化技術を駆使することで、堅牢なシステム運用が可能だということだ。今回フレパーが事業としてのZDCのベースにSystem z10 ECを活用しているのも、そうしたIBMの経験や実績、技術力の高さがあるからだ。
「System z10 ECに代表されるIBM製メインフレームに搭載される仮想化技術はもちろん信頼できるものです。また、IBMでは、メインフレームの今後の継続性を考えた時、ロードマップを含めて今後を約束しています。さらにメインフレームでは、24時間サポートが当然であり、絶対的安心感を与えることができます。今回ハイエンドのSystem z10 ECを選択したのも、サポートに代表されるIBMの見えない力が集約されるからです」(フレパー取締役で事業統括本部本部長を務める川口明裕氏)
フレパーでは、ZDCで提供するサービス内容について(1)仮想プラットフォームサービス(2)試験運用サービス(3)3D仮想空間サービス――の3つを考えているという。同社は当面、これら3つのサービス内容を提供していきたいとしているが、ユーザー企業の需要に応じて、サービス内容を拡大していきたいとしている。
(1)の仮想化プラットフォームサービスは、現在企業が稼働させているシステムをSystem z10 EC上に集約・統合してしまうというものだ。(2)の試験運用サービスでは、System z10 ECの中に短期的な開発環境、あるいは研究用の環境を構築できる。(3)の3D仮想空間サービスは、既存の3D仮想空間はエンドユーザーのクライアントPCの処理性能に大きく依存することになるが、そうした3D仮想空間の描画処理をメインフレーム上でさせることができるというものだ。