避けられない真理であれば、「何かを失った時に人はどう対処したか」という事例は数多くあるはずです。それらを知識として学び、自分の身に起こった時に、もっとも適切な方法をとることが求められます。もちろん「みんな同じなんだ」と思えることも重要です。人間ですから、起こったことを忘れるには時間がかかります。だからこそ、その事実を受け止めて、自分なりに対処していかなければなりません。
よく、「つらいことを忘れるために、ほかのことに打ち込む」といった方法が語られますが、私はその方法を勧めません。一時的に忘れてたとしても、それはあくまで一時的なことです。自分のなかで、その事実を消化しなければ、前には進めません。
結局は考え方です。だからこそ世に多くの宗教が生まれ、いまなお求められているのでしょう。ただ、何も作られた宗教にすがることだけが解決方法ではありません。自分なりの方法が見つかれば、それは「自分教」になります。もちろん他人に迷惑をかけてはいけませんが、自分なりの考え方ができあがれば、それは何にも増して強い心となります。
一方、可逆的な代替のきく事象、例えば前述した、就職・転職の失敗、受験の失敗、失恋などは、結果を受け止めて、それが人生の岐路、または分岐点であったと思うことが大切です。人生は迷路を歩くようなものだと思った方が気が楽かもしれません。必ず出口はあるのだけど、ちょっと違う道に入ってしまっただけ。右に行くはずだったのに間違えて左に進んだので分岐点に戻って右に行く、といった感じです。必ず出口があることだけは忘れずに進みたいものです。
もちろん再チャレンジが可能であれば、すべきでしょう。ただ、就職・転職の失敗は相性もあるので、相性の悪い会社に再チャレンジするのは難しいかもしれません。恋愛もそうですね(笑)。まぁ、こればかりはタイミングもありますし、時間の経過によって相性が変わることもあるので何とも言えません。
思い出の品々の焼失は、私も大きなショックを受けた経験があります。その時は、「自分が死んだら必要のないものだ」として片付け、心の中に早々と思い出としてしまい込んでおきました。
つまるところ、「何もしない」ということは、問題を解決するために積極的に行動しないだけであって、その間起こった問題について、何を考え、自分でどう消化するのか、ということにつきます。生きていくからには、まったく何もしない時間はありません。細胞は日々生き続けています。だからこそ自分教が必要だともいえます。自分教ができるまで、読書と映画の日々もいいではありませんか。

筆者紹介
田代真人
マイ・カウンセラー 代表取締役。九州大学工学部機械工学科卒業後、朝日新聞社を経て学習研究社へ。ファッション女性誌「ル・クール」編集者の後、主婦向け実用雑誌 「おはよう奥さん」の創刊メンバーとして、主婦の悩みを解決する「悩み相談センター」を開設する。その後ダイヤモンド社へ移籍し、「ダイヤモンド・ブレイク!」「ビットビジネス」など数々の雑誌を編集長として創刊した後、ビジネス開発本部副部長に就任。2006年、これまでの編集経験から「人々の悩みを解決したい」との思いに至り、マイ・カウンセラーを設立。2007年ダイヤモンド社を退社し、メディアプロデュース業のメディア・ナレッジを創業すると共に、マイ・カウンセラーの代表取締役に就任する。
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