単なる「無料」はビジネスモデルではない--「無料提供」とビジネスモデルの関係を考える

文:Phil Wainewright 翻訳校正:石橋啓一郎 2009年07月17日 13時26分

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 コンテンツやサービスを無料で提供しながら、どのように収益を得るかについての新たな議論が、インターネット上で巻き起こっている。この議論は、Wiredの編集者Chris Andersonの新しい著書、「Free: The Future of a Radical Price」(「無料:過激な価格のもたらす未来」の意)の出版に刺激されたものだ。多くの人は、自分たちのやっていることに課金することなく収益を得ることができるという考え方を気に入っているようだ。これはおそらく、人々に金銭を求めるという考えが彼らを居心地悪くさせるからだろうし、あるいは彼らが自分のウェブサイトに課金の仕組みを組み込むという考えを最初からまったく持っていないからだろう(Twitter、Facebookなどを見よ)。

 この種の希望的観測に付きものの不幸な副作用は、普段ならしっかりした考えを持っている人たちが、その話題については完全な戯言を書くと言うことだ。私はたった今Mark Cuban氏のブログ記事を読んだところだが、同氏はGoogleが「無料であることによって生き、そして死ぬ」と断言している。私はそうは思わない。ひょっとするとCuban氏は私の知らないGoogleの内情を知っているのかもしれないが、利用者をAdWordsに引きつけるために入会時に提供している50ドル分の利用権を除けば、Googleが広告を無料で配っているとは聞いたことがない。Googleのビジネスモデルは広告の販売であり、競争がほとんど働いていないため、Googleはそれらの広告から大きな利幅を得ている。確かにこれらの広告は、利用される時点では無料のコンテンツに掲載されているが、それらのコンテンツはどれもGoogleが所有しているものではない。Googleの賢さは、他人の無料コンテンツに相乗りして金銭を生み出すビジネスを構築したことだ。ウェブの他の部分がリスクを引き受け、Googleは収益を上げる。なんと素晴らしいことだ。

 Anderson氏でさえ、誰かに何かを請求することなしに収益を上げることができるとは考えていない。Financial TimesのJohn Gapper氏がホストを務めるブログ上での議論で、Anderson氏は同氏の本の題材でいう無料とは、金銭を払う見込み客を集める餌としての無料であるフリーミアムの場合と同じように、ただ単に無料でサービスを提供するという話ではないと説明している。Anderson氏は次のような発言をしている(このブログを読んでいるSaaS業界の読者は、この発言に興味を覚えるかも知れない)。

 ・・・これが私の本の実際の中核です。私が「新しい経済モデル」と言っているものは、ものに広告を付ければいいという話ではありません。そんな話は、何百年も前からあるものです。そうではなく、私はフリーミアムがうまく働く背景にある経済学について話しているのです。フリーミアムは、従来の無料サンプルの逆を行くものです。製品の数%をマーケティングのために無料で提供し、残りを売ろうとするのではなく、製品のほとんどをマーケティングのために無料で配ってしまい、わずかな部分を売ろうとしています。これは、生産と流通の限界費用が「端数として切り捨て」できるほどゼロに近い、オンラインの世界でのみ可能なことです。

 フリーミアムは、開花しつつあるオンラインの「Software as a Service」業界、オンラインゲーム業界、そして急速に拡大しているiPhoneのアプリケーション市場では主流のビジネスモデルとなっています。私は、フリーミアムの周りにビジネスモデルを作っていくことが、このオンライン時代においてはもっとも興味深く、有利な試みになるだろうと考えています(何に課金し、何には課金すべきでないかを決定することは、経済学だけでなく心理学の問題でもあるでしょう)。そしてこの本は、本文においても最後に付いている戦術的なアドバイスの中においても、それを助けることを意図しています。

 John Gapper氏のブログ中での議論や、ベンチャーキャピタリストのFred Wilson氏Brad Feld氏のブログ記事を読めば、あるいはNew YorkerのMalcolm Gladwell氏の批判的な書評を読めば、Anderson氏がこのモデルを熟知しているということは明らかだ。このハードカバーの本を読みたければ、27ドルかかるのだ(現在Amazonでは、この本の値段の3分の1を割引している)。代わりのもので我慢できるという英国の読者ならば、スポンサー付きの省略版やオーディオブック版を無料で入手することもできる

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