「研修」は期待大でも効果小、その原因は?--調査で明らかになった人材育成の課題 - (page 3)

梅田正隆(ロビンソン)

2009-10-29 20:12

期待は大きい「研修」--でも効果は?

 さらに、領域4の「人材育成の基盤」においては、まず、人材育成に関する現場の理解度について、景気の影響を受けて現場の理解度が低下した事実はないと報告した。次に、人材育成に関して現場が何に期待しているかについて、短期的な効果を狙う施策が上位に位置しており、こちらは景況の変化を反映していると報告した。

 現場の不満についても調査しており、即戦力の育成に役立たない研修に対する不満が上位に位置し、この項目についても短期的な視点が認められる。

「人材育成の基盤」の領域における現場の期待 「人材育成の基盤」の領域における現場の期待

 人材育成に関する課題のトレンドについて、同社では次のように分析している。

実態調査結果からみる課題のトレンド 実態調査結果からみる課題のトレンド(画像クリックで拡大表示)

 まず、「あるべき人材像を中心として文脈のある人材育成を実施する」こと。それにより人材育成を効率化していくことが可能となる。不況下においては、打ち手を広げることが困難となるため、絞り込むことが重要となる。

 次に、「全体感のある人材育成モデルをつくる」こと。ポイントは、現場の育成マインドをどうやって高めるかだ。不況下にあって、現場では多くの課題が浮上しており、改善すべき点も見えやすくなっている。

 一方で、景況に左右されて、現場からの短期的な要求が強まっていること。同時に、企業における人材育成投資の予算は大幅に減少しており、限られた予算を有効活用しなければならない。そこで「どのような施策を実施するか」という視点から、施策を絞り込み「どうやって施策の効果を上げていくか」という運用面の視点に変える必要がある、と同社は指摘する。

 人材育成の様々な打ち手の中で、「研修」は社員に気づきを与えることを期待して実施される、最も重要度の高い施策として期待されているが、実際に気づきを与え、行動変容を促したかという成果の観点では、研修は「本人がその場では気づきを得るものの、行動変容につながっていない」との評価が最も多い。

 また、人材育成サイクルにおける課題を抽出したところ、研修施策そのものの課題よりも、研修の前と後の工程に多くの課題が存在していることが分かったと報告した。

人材育成サイクルに関する課題 人材育成サイクルに関する課題(画像クリックで拡大表示)

 NTTレゾナントでは、人材育成において最も重要な「研修」施策について、研修前の工程と研修後の工程を改善し、研修の効果を高めると同時に、上司の育成マインドも高めていくことが重要である、と提言している。

 あなたの会社に、ここで挙げられてきたような課題はないだろうか。あなたが現場の上長なら、人材育成のキーマンとして、かなり重要な役割を期待されていることもお忘れなく。

 さて、今回は実態調査で明らかになった人材育成にまつわる現在の課題について見てきた。次回は、人的資源の活用を支援するITについて人事系システムの専門家とともに学んでいくことにしよう。企業の人材活用や育成に関する多くの課題に対し、ITはどのようなサポートを与えてくれるのだろうか。

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