新ポータブル・ポスは、従来のクレジットカードやデビットカードに加え、nanaco、Edy、WAONに対応した電子マネー決済機能を新たに内蔵し、玄関先でも運賃や梱包資材代金を電子マネーで支払えるようになる。木川氏は「交通系カードも対応に加えたい」と話しており、今後Suica/PASMO等が利用できるようになる可能性もある。そのほか、画面サイズの拡大や視認性および操作性の向上、プリンタの印字速度向上なども図られている。
加えて、サーバとの連携機能を強化する。現在、顧客から入った集荷依頼や再配達依頼の処理はドライバー各自の努力に負うところが大きいが、依頼情報を端末の画面上へリアルタイムに一覧表示していくことで、ドライバーが情報を整理する負担を軽減し、作業ミス防止につなげる。
また、端末とサーバとの連携を重視したことには、次のような背景もある。
ヤマト運輸は2009年12月より、福島県でネットスーパーを運営する流通業者、いちいと共同で高齢者を主な対象とした買い物サービスを試験展開している。ネコピットをヤマト運輸の営業所だけでなく地域の集会所などにも設置し、タッチパネル操作で商品を注文できるようにすることで、自動車の運転ができず、インターネット環境がない人でも、食料品や日用品を届けてもらうことが可能になる。
このようなサービスを、ドライバーの持つポータブル・ポスからでも利用できるようにしたのが新システムの特徴。ネコピットのある場所まで出かけるのが困難な人でも、荷物の配達や集荷時にネットスーパーなどへアクセスできる仕組みを整えることで、宅急便のインフラを地域の生活支援に活用するという発想だ。顧客の玄関先からネット上のサービスにアクセスするこの環境を、同社は「軒先クラウドコンピューティング」と呼んでいる。
新型のポータブル・ポスは今月より順次導入を拡大し、7月までには全国に広げる。導入台数は5万3000台に上る。