日立製作所は2月4日、代表取締役社長に現副社長の中西宏明氏を昇格させる4月1日付けの社長人事を発表した。
会長兼社長を務めていた川村隆氏は、在任期間1年という「ワンポイントリリーフ」で社長の任を解かれ、今後、代表取締役会長の職に専念する。
当初より川村氏の社長としてのリーダーシップは短期であるとの見方はあったものの、1年間という「超短期」でのバトンタッチには驚きの声もあがる。
次期社長の中西氏も、「このタイミングでの打診には驚いた」と明かす。昨年末に社長就任を打診されたときには、社内カンパニー制を導入するとともに、川村体制下で、5人の副社長が支える体制への移行時期。「まさか」というのが本音だったという。
振り返ってみると、2009年4月における川村氏の会長兼社長就任から、異例づくめだった。
子会社である日立マクセルの会長から、本体の日立製作所の会長兼社長に就くということ自体が異例であるし、若返りが前提とされることが一般的な新社長人事に、前社長の古川一夫氏から7歳も高齢化が進む、69歳での新社長登板も異例だった。さらに、財務畑出身の2人の副社長を、子会社から呼び寄せるという人事も驚きだった。
川村氏は、「当時は、3年連続の最終赤字という業績のなかでの就任であり、まずは『出血』を止めることが最優先課題。迅速な意思決定を下す必要があった」とする。2009年3月期の赤字は7873億円と、巨額な損失を発表してからまだ1年を経過していない。川村氏が、会長兼社長に就任後、大鉈ともいえる改革に乗り出したのは周知の通りだ。
日立マクセルをはじめとする上場5社の完全子会社化、ルネサステクノロジとNECエレクトロニクスとの経営統合、携帯電話事業を行うカシオ日立モバイルコミュニケーションズとNECの携帯電話事業部門との統合など、グループ会社の再編に矢継ぎ早に取り組み、薄型テレビ事業の縮小をはじめとする構造改革にも挑んだ。
日立の本流である重電出身という経験も、日立グループの大改革を促したといえよう。