大鉈振るった日立・川村社長が見据えるスマートグリッド時代の「勝利の条件」とは

大河原克行 2009年08月03日 09時25分

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 日立製作所が7月28日に発表した上場連結子会社5社の完全子会社化は、今年4月に社長に就任した川村隆氏が、早くも構造改革に大鉈を振るいはじめたことを印象づけるものとなった。

 社長就任直前まで、会長を務めていた日立マクセル、日立プラントテクノロジーのほか、日立情報システムズ、日立ソフトウェアエンジニアリング、日立システムアンドサービスの情報関連3社を、公開買付けにより株式を取得と、完全子会社化。買い付け金額は5社合計で2822億400万円を予定している。

川村隆氏 日立製作所、代表執行役 執行役会長兼社長の川村隆氏(写真は社長就任会見時のもの)

 今年12月に70歳を迎える川村社長は、社長就任時に「若返りの時代にベテランで行く」(取締役会議長の庄山悦彦氏)と表現されたように、前任の副会長である古川一夫氏よりも、7歳年上。日立の主軸である重電畑を長年歩んできた経験からも、まさに日立再編の大鉈を振るうには最適な人物だといえる。

 川村氏の社長就任にあわせて、いずれもCFO経験者であり、子会社に転籍していた八丁地隆氏と三好崇司氏を副社長として呼び戻したのも、大規模な改革に向けた準備だったといっていい。

 今回の再編で掲げたキーワードは、「社会イノベーション事業の強化」である。

 中でも、情報関連企業である「日立情報システムズ」「日立ソフトウェアエンジニアリング」「日立システムアンドサービス」の3社は、社会イノベーションを情報通信システム事業強化の観点からサポートすることになる。

 具体的には、環境配慮型のデータセンター、アウトソーシングおよびクラウドコンピューティングなどによる事業拡大だ。3社の完全子会社は、これら事業の推進の上で、より密接な体制を構築するためには不可欠な判断だっただろう。

 その一方で、今回の完全子会社化の一手は、将来訪れる「スマートグリッド」時代に向けた布石ともいえそうだ。

 スマートグリッドとは、一般的に「次世代電力網」と呼ばれ、家庭や企業で発電された電力を、電力網を使ってそれぞれに再配分するという仕組み。大規模発電所から電力を一方通行で送る現在の仕組みとは大きく異なる。

 重要なのは、スマートグリッドは分散型であるため、それに伴って情報がやり取りされ、それを制御する仕組みが求められるという点だ。

 例えば、各家庭に設置されるスマートメーターは、ITを用いて、発電する家庭や企業と、電力を求める家庭や企業との状況を、情報として双方向にやりとりし、制御する必要が出てくる。

 そして、これらの情報は、様々な応用が可能になる点も見逃せない。

 電力消費状況をモニターして、留守宅であることを認識すれば、宅配便業者に留守であることを知らせ、効率的な配送を実現するといったこともできる。また個別の家電製品とつながり、電力消費などを管理するようになれば、付加情報として録画予約状況を見て、視聴率を予測するといったこともできるようになる。

 このように「情報」を「制御」することがスマートグリッドには求められ、社会インフラを押さえることがスマートグリッド時代の勝ち組の要件となる。

 先ごろ、日立製作所が開催したプライベートイベント「日立 uVALUEコンベンション2009」では、同社執行役副社長である高橋直也氏が、「革新が求められている社会インフラにおいて、日立は、電力システム、環境・産業・交通システム、社会・都市システム、情報通信システムを、それぞれ融合することが必要である。そして、これまで別々に考えてきた『情報』と『制御』を連携させることで、より豊かな社会を実現できる」とした。

 情報関連子会社を完全子会社することで、より密接した関係のもとで、新たな社会インフラを押さえることができる優位な立場に立とうというわけだ。

 インターネット時代には、その情報と制御を抑えた企業が勝ち組となったように、スマートグリッド時代においても、やはり情報と制御が鍵になる。そして、この取り組みは、日立が掲げる海外事業の拡大においても優位に働くことになろう。

 社会インフラに強みを持つ日立は、スマートグリッドのインフラづくりに最も近いベンダーの1社だ。今回の再編は、今を「環境と情報とエネルギーの世紀」ととらえる日立の大きな一手になるはずだ。

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