一番いいのはシステムの一元化
オラクルは、IFRS適用の対応で3層のオラクル製品活用を提唱している。Oracle EBSやPeopleSoftなどのERPに含まれる財務管理アプリケーションを中核にして、その下層に法令対応ソリューション「Oracle Governance, Risk, & Compliance(GRC)Suite」、財務管理アプリケーションの上層に企業パフォーマンス管理(Enterprise Performance Management:EPM)ソリューションの「Oracle Enterprise Performance Management(EPM)System」という3層がIFRS適用に有効的としている。
中層の財務管理アプリケーションはERPと連携してデータを収集するとともに、複数の元帳を保持、複数の会計基準に対応するなどのIFRS対応機能を搭載している。上層のEPMは、IFRSや各国のGAAPという複数の会計基準に対応しながらもIFRSベースの財務諸表も作成できる。
そして下層のGRCで各国の法令順守(コンプライアンス)に対応してERPが適切に運営されていることを保証できるようになっている。GRCは、設定された会計マニュアルに基づいて業務プロセスの変更を記録、上層のアプリケーションを管理、監視して業務プロセスがコンプライアンスの点で問題ないことを証明できるようになっている。
そうしたOracle製品がIFRS対応でも有効的であることを説明した上でMoran氏は、IFRSへの対応として「最もいいのは、システムの一元化」と説明する。業務の標準化などを進めて、会計関連業務をシェアードサービス化できるからだ。システムの一元化をしないと各国の拠点に担当者を置かざるを得なくなり、会計関連業務の手間がかかることになる。
そのシステムも、会計の仕組み自体をIFRSをベースにしたものにして、各国拠点で必要とされる財務諸表や税務関係書類は、それぞれの基準にあったものを提出するという体制にした方が「シンプルなアプローチ」(同)としている。その具体例として、ある仏企業は、IFRS対応で最初は仏基準をベースにして、連結財務諸表はIFRSに変換するという体制であったという。しかし、システムをバージョンアップしたときに、ベースはIFRSにしている。
Moran氏によれば、IFRSへの移行を済ませている欧州企業のシステムは、「Oracle EBS Release 11i」で対応したとしている。これらの欧州企業の多くは、本社が所在する国の法制度に沿った一般会計、IFRS対応のための補助元帳を管理するといった形でIFRSへの移行を済ませているとしている。
一方で、IFRSに現在移行している企業を見ると「Oracle EBSであればRelease 12へのシステムアップグレードを検討している」(同)という。そうした欧州企業は、業務の中核となる補助元帳プロセスでのIFRS対応を計画しているところだとしている。また、それらの欧州企業は、Oracle EPMと総勘定元帳(GL)、補助元帳の両方を活用する計画を立てているという。
IFRSを通じてビジネスを最適化すべし
米英の2つの国で公認会計士の資格を保持するMoran氏は、1996年にOracleに入社。その後2000年からIFRSを作成する国際会計基準審議会(International Accounting Standards Board:IASB)の“IT討議グループ”にOracle代表として参加している。IT討議グループは、OracleやSAP、PeopleSoft、JD Edwardsといった会計に関連するソフトウェアの情報をIASBに情報提供するとともに、会計関連のソフトウェア開発につながる情報をIASBから取得するなどの活動を展開している、
現在日本では、IFRSは2015年から強制適用が始まる見込みとされているが、まだはっきりと決まっているわけではなく、2012年段階でその後のスケジュールが決められることになっている。同様に米国でも2011年の段階でいつからIFRSを強制適用するかが決められる。その中で米国のIFRS採用に懐疑的見方をする向きがないわけではない。そうした見方があることに触れてMoran氏は、「米企業でも積極的な企業は、IFRS移行を検討するようロビー活動を展開しているところがある」と説明。IFRS適用に反対意見もあることを認めた上で次のような見方を明らかにしている。