拡散する都市をコンパクト化し、ITを活用して状況を“見える化”する必要がある――。NTTデータと野村総合研究所(NRI)が2月26日に開催した「ITと新社会デザインフォーラム2010」で、NRIコンサルティング事業本部 副部長・執行役員の三浦智康氏が訴えた。
三浦氏は同イベントで「ITと変貌する社会インフラ」と題し講演。日本の社会と産業が転換期を迎えるなか、ITがどのように貢献できるかを提言している。
システムと人をつなぎ高品質な都市基盤を目指せ
三浦氏によると、上下水道やエネルギー、交通や橋といった国内インフラのストック額は現在、約700兆円にのぼるという。これらは1955年から1973年の高度経済成長期に集中整備され、35年から40年が寿命というインフラは2010年以降、本格的な更新期を迎える。この反面、日本の動向は、米国や英国、豪州と比べ、1995年を境に公共投資を削減しているという。
三浦氏は、「人口の減少や少子高齢化、資源や財政、人材が制約されるなか、効率的にインフラを再構築する必要がある」と指摘している。
これらの課題解決に向け三浦氏は、拡散する都市を集約化、コンパクト化することが必然であるとしている。このために、各インフラのハードウェアを横断的につなぎ、情報収集や情報分析、モニタリングなど状況の可視化を図る。システムと人をつなぐことで、高品質な都市基盤を実現できるとしている。
NTTデータでは、橋にセンサを設置して劣化や異常をリアルタイムで監視する橋梁モニタリングシステム「BRIMOS」を提供。また、NTTグループでは、タクシーやバス、運送会社向けに携帯電話網を使って運転状況を遠隔管理するサービスを展開している。
さらに三浦氏は、国内のインフラ事業で蓄積した運用システムのノウハウを新興国に輸出することで、日本の国際競争力の向上やビジネス機会の獲得を図れるとしている。実際に日本は、ベトナムでインフラ整備や新幹線技術の提供を行っている。
なお、別稿でNTTデータ経営研究所 情報戦略コンサルティング本部長パートナーの三谷慶一郎氏による「新たなIT人材像とITサービス産業の変革を目指して」を紹介している。