MM総研が発表した2009年の国内サーバ市場実績によると、市場全体は前年比12.7%減の49万3725台となったものの、富士通は前年の8万1000台から8万7350台へと拡大。前年比では7.8%増と上位5社の中では唯一、成長を遂げた。順位も前年の4位から3位へと浮上している。MM総研では「全社を挙げてPCサーバの拡販に注力。特にブレードサーバの拡販に注力しており、新規パートナーの開拓、またHPC(ハイパフォーマンスコンピューティング)市場向けの大口案件を立て続けに獲得していることが台数増に寄与している」と分析している。IDC Japanの調査でも、x86サーバの出荷金額は上位6社で唯一プラス。順位も4位から3位にアップしている。
同社では、長期的なレンジで見た時に、サーバ事業全体の成長の柱にx86サーバを据える姿勢を示している。ここでの成否がプロダクト事業の成長を左右し、ひいては富士通の事業全体を左右すると見ている。戦略的事業としてサーバビジネスを位置づけているのは誰の目にも明らかだ。
サーバ事業に関しては、富士通シーメンスを100%子会社化した富士通テクノロジー・ソリューションズにおいて、グローバル体制でのオペレーションを展開。さらにパートナー戦略を見直し、手厚いインセンティブを提供することで、パートナーが本気になって取り組むことができる施策を展開しており、これが戦略的な価格提案となって表面化している。中には「外資系メーカーが驚くほどの価格提案を打ち出している」という声もある。
そのほか、中堅企業向けシステムの商談に、約80種類用意した1枚の提案書を切り口にして見積もりからシステム構築までの提案を行い、納期を大幅短縮する「バスケット提案」といった手法を導入している。約9000の商談を分析し、その中からニーズの高いテーマである6分野26種類を抽出して提案するインフラの標準化、工業化の取り組みも効果をあげつつある。
富士通では、2009年度に国内で12万台のx86サーバの出荷を計画している。調査会社が発表した富士通の2009年暦年のサーバ出荷の実績が8万台レベルであることと比較すると、この数字にどこまで肉薄できるかは気になるところだ。そして、海外でも欧州での事業拡大が加速しなくてはならないほか、北米、アジアでの地盤づくりが課題となる。
「旗を降ろさない」と改めて宣言した富士通の自信はどこからくるのか。そして、2010年度の「全世界50万台、国内20万台」に向けて、どの程度の助走ができているのだろうか。まずは、4月末にも明らかになる2009年度の実績が注目される。