IDC Japanは3月24日、国内企業の通信サービスの利用に関する調査結果をまとめた。同調査によれば、不況下においても、大企業の海外拠点におけるWAN接続関連の予算は、増加傾向にあることがわかったという。
海外拠点を持つ従業員数1000人以上の企業のうち、2010年の海外WAN予算を2009年より「増やす」と回答した企業は23.0%、「減らす」と回答した企業は19.9%と、増加が減少を上回っているという。これは、国内拠点向けの通信予算が、企業規模によらず2008年から引き続き縮小傾向にある状況とは対照的であり、また、従業員数100人未満の企業では、減少傾向が強いこととも対照的だとしている。
IDC Japanは、この背景として、現在大企業の多くが中国を始めとするアジア諸国に生産、販売拠点の拡大を続けており、特に販売拠点については、以前の不況時のように一時的な不採算を理由に完全撤退するケースは少なくなっていることが挙げられるという。また、これはむしろ、今後の成長が望めない国内市場から新たな市場を求めてアジアへの展開を加速している状況ともとらえられるという。
さらに同調査では、サーバ、データセンター集約、映像アプリケーション、シンクライアントといった上位レイヤにおける取り組みがWAN回線の帯域拡大につながると考える企業が、取り組みを行っている企業の約3割にのぼる結果になったと報告している。また、広域イーサネット市場では、3年連続で利用帯域の拡大傾向がみられる一方、IP-VPN(スタンダード)市場では利用帯域は3年連続で縮小傾向であることも明らかになったとしている。
今回の調査結果について、IDC Japanコミュニケーションズ シニアマーケットアナリストの小野陽子氏は、「大企業は、不況下においても、海外拠点におけるWAN利用への投資を拡大している。通信事業者は、海外市場に活路を求めて積極的に海外展開を進めるユーザー企業のこのような動向を踏まえ、不況下においてもグローバルサービスを積極的に推進していくべきである」とコメントしている。