日本オラクルは7月22日、業務プロセス管理(BPM)ソフトウェアの最新版「Oracle Business Process Management(BPM) Suite 11g」を発表した。最小構成価格は502万1100円からとしている。同社のミドルウェア群「Oracle Fusion Middleware 11g」を構成するOracle BPM Suiteは業務プロセスを改善するためにPDCA(Plan-Do-Check-Act)サイクルを回すために必要な機能を包括的に、統合された環境として提供するBPMのスイート製品になる。
同社の龍野智幸氏(Fusion Middleware事業統括本部ビジネス推進本部長)は「企業はこの10年ほどBPMに取り組んできているが、ERP(統合基幹業務システム)パッケージやSOA(サービス指向アーキテクチャ)ほどの成功はしていない」と、BPMがそれほど日本企業に浸透していないことを明らかにしている。BPMは業務プロセスを改善するものだが、そもそも業務プロセスをなぜ改善する必要があるのか。
龍野氏は、業務プロセスを改善しないということは「業務生産性が向上しないことになる。業務生産性の低下は、収益の低下を引き起こすだけでなく、顧客満足度の低下につながり、競争力の低下にもつながる。加えて間接コストの増加を招く可能性も含む」と説明し、BPMで業務プロセスを改善することの重要性を強調している。
そうした重要性に気付いた企業は、「属人化したプロセスの標準化への取り組みを加速」(龍野氏)させてはいるが、実際のところは「プロセスの可視化まででとどまっており、システム化には至っていない」というのが現状のようだ。BPMをシステム化して、改善のPDCAサイクルを回せるようになれば、ビジネス環境の変化にあわせて業務プロセスを変えられるようになり、企業としての業務生産性も向上できると龍野氏は説明する(BPMを詳しく知りたい方は「仕事はプロセスで考える」を参照)。
もちろん、BPMのシステム化に気づき、すでにPDCAサイクルを回している企業も存在するだろう。しかし、そこにはまた別の課題が存在する。それは「ユーザー部門が目指す業務プロセスの理想像があっても、それをシステムに反映させるのに時間がかかってしまう」(龍野氏)という課題だ。また、ユーザー部門が主導でPDCAサイクルを回せないという課題もある。加えて「コミュニケーションが必要となる業務プロセスをシステムに落とし込めていない」(同氏)という課題も存在する。
業務プロセスは情報システム部門が主導して変えていくものではない。あくまでも業務の主体であるユーザー部門が先導してPDCAサイクルを回さなければならないからだ。従来のBPMソフトウェアは、そうした点で課題を解消しきることができなかったと指摘できる。
今回発表されたOracle BPM Suite 11gは、こうした課題を解決する機能を搭載したとしている。1つめの課題である、システムに反映するまでに時間がかかるというものに対しては、“シングルプラットフォーム・シングルエディタ”という答えをオラクルは出している。
BPMソフトウェアでは、主に「設計」「実装(実行)」「運用」という3つの段階を踏まえることになる。設計の段階では、業務プロセスを描画するグラフィカルな標準記法である「Business Process Modeling Notation(BPMN)」で業務プロセスを書き、それを実装の段階でビジネスプロセスモデリング言語の「Business Process Execution Language(BPEL)」に変換して、実行環境に落とし込む必要があった。その上で“Business Activity Monitering(BAM)”で業務プロセスにボトルネックがないかどうか監視するというのが、BPMソフトウェアの大まかな仕組みだ。
既存のBPMソフトウェアでは、この設計から実装の段階で変換するのに時間がかかると同時に、システムとして複雑なものになってしまうことがよくあると指摘される。先に挙げたシングルプラットフォーム・シングルエディタでは、この設計と実装をひとつの基盤の上でやってしまおうという解決策になる。