日立製作所(日立)は7月22、23日の2日間、有楽町の東京国際フォーラムにおいて、プライベートイベント「Hitachi uVALUE CONVENTION 2010」を開催した。開催初日となる22日、執行役社長の中西宏明氏は「日立グループが挑む社会イノベーション」と題した基調講演を行い、創業100周年を迎えた同社が持つ社会インフラ構築のノウハウと情報・通信技術により、いかにイノベーションを実現していくかについて説明した。
中西氏は冒頭、「日立はこの100年の中で、常に社会インフラを支えてきた」と切り出し、1900年代後半からの日本における急激な経済成長の様子をGNP/GDPのグラフを示しつつ、その経済成長に合わせるように、日本においては、鉄道、電気、水道、電話網といったさまざまな社会インフラが整備され、品質を高めていったと述べた。
「速く」「小さく」「遠くに」「大量に」といった価値を獲得する一方で、社会には大気汚染、水質汚濁、通勤ラッシュ、交通渋滞といった解決すべき課題も発生したが、これらに対しても「様々な技術を使って対応してきた」とする。世界的に見ても類をみないほどに、安定して供給される電気、上質な水道水、ICカードを使って自由に移動できる交通機関など、日本が現在享受している「快適なくらし」は、こうした技術に支えられた社会インフラによって実現されているとする。
そして、中西氏は「次の100年における大きな変化」として、世界の新興国における都市人口と農村人口が2020年に逆転するという国連の予測を引用。グローバル規模で都市化が進展するにあたって、「都市への人口集中を支えるための、社会インフラ整備への需要が今後拡大する」とする。
新興国においては、今後、生活水準が急速に向上するとみられ、そこでは先進各国とは異なり、当初から環境に配慮した社会インフラ作りが重要になるとする。中西氏は「日本がこれまで獲得してきた社会インフラ構築のノウハウを、日立はグローバルに提供していく」とし、同社ではファイナンス、サービス設計、システム設計、運用・維持・保守までを含むトータルエンジニアリングによって、社会インフラの全体最適を図れるとした。
同社は中期経営計画として「社会イノベーション事業による成長」を掲げるなど、「日立の創業の原点」として同事業に注力している。事業分野は「産業・交通・都市開発システム」「電力システム」「情報・通信システム」と多岐にわたっている。中西氏は、グローバルでのインフラ事業への取り組みとして、南アフリカ共和国での石炭火力発電設備、英国の高速鉄道CTRL(Channel Tunnel Rail Link:ドーバー海峡トンネル連絡線)、エレベータとエスカレータ、米NASAでの長期データ保存向けストレージシステム(Hitachi Content Archive Platform)などを紹介。トータルエンジニアリングの要点として、導入先となる地域の特性に合わせ、そこでのパートナーや地域との協創を基本とした「グローカル」がポイントであるとした。
また、都市や国家レベルの社会インフラプロジェクトをパッケージで一括提供するにあたり、政府機関等との連絡をとりつつ、自治体、商社、電力会社、現地企業、デベロッパー、鉄道会社、パートナーなどを日立がシステム面で「全日本チーム」としてとりまとめることで、国際的な競争を勝ち抜いていくとする。ある調査によれば、グローバルでの社会インフラに対する投資は、2030年までに40兆ドルに達する見込みという。中西氏は、「急激に成長する新興国のダイナミズムをうけつつ、我々もともに成長していく」と、改めて社会インフラ事業への注力をコミットした。