SaaSで提供されるアプリケーションは、メールやスケジューラーなどの「文房具としてのIT」(ガートナー 亦賀忠明氏)が主流だ。SAPは文房具を提供せず、する必要もないと思うが、ビジネスアプリケーションの補完としてのビジネスアプリケーションというアプローチは会社の特徴をよく表している。
そう、我々が得意なのはヘビーなビジネスアプリケーションだ。オンデマンドで補完するとしても、それはビジネスアプリケーション。文房具のようなアプリケーションとは異なるものを提供していくことになる。
SAPはビジネスアプリケーションを熟知しているため、そこでこそ差別化できる要因があるのだ。
ここまで話を聞いていると、モバイルもオンデマンドも、根本にあるのは“コンシューマライゼーション”という大きな潮流ではないだろうか?
まさにそういう話だ。現在のコンシューマライゼーションは、テクノロジというよりも文化の問題だともいえるだろう。
たとえば、若者はモバイルウェブの文化や新しいテクノロジに親和性がある。一方、私のような(個人として見れば)開発が得意な者もおり、そしてビジネスをよく知っているとする。
この両者が業務で協働する際には、両者の文化が必ず必要になる。つまり、若者文化の代表としてはコンシューマーエクスペリエンスであり、開発とビジネスからはエンタープライズユースに耐えられるクオリティのデータと機能が必要になる。
SAPでは今、コンシューマーテクノロジを使ってSAPシステムの中へ自然に入っていけるモバイルテクノロジを開発している。エンタープライズのデータの堅牢性や機能を持たせた上で、コンシューマーエクスペリエンスを統合させる――SAPはこうしてコンシューマライゼーションを実現しようとしている。