CIOは“ビジネスパーソン”であれ - (page 2)

聞き手・文=松岡功

2010-10-13 08:00

CIOはビジネスプロセス改善をリードせよ

――ビジネスプロセスの改善は、世界のCIOが2005年から連続してビジネス面での優先度トップに挙げています。これは取りも直さず、CIOが今まで、この課題に対応できるソリューションを持ち得なかったことを現しているのではないですか。

Roberts いや、ビジネスプロセス改善のためのソリューションはいくつも出てきていますし、進化も遂げていると思います。ただ、取り組んでいる企業を見ると、ビジネスプロセスそのものの数が膨大で、改善作業が追いついていないというのが実情です。したがって、積極的に取り組んでいる企業は、まず顧客やサプライチェーンに関連するプロセスを優先して改善作業を進めているケースが多いようです。

 それもさることながら、CIOが継続して問題視している最大の理由は、ビジネスプロセスの改善には終わりがないからだと言えます。企業はベストプラクティスを求めてたゆまぬ努力を続けていますが、ビジネスプロセスは企業を取り巻く、さまざまな環境の変化に常に対応させていかなければなりません。したがって、その改善に向けては成功体験がある方が難しかったりするわけです。

――そうしたビジネスプロセスの改善を、CIOはどのように進めていけばよいのでしょうか。

Roberts 本来ならば、ビジネスプロセスごとのオーナーが誰なのかを決めておくのが望ましいところです。その方が、意思決定が早くなりますから。しかし、大半のビジネスプロセスが、たとえば営業や経理、物流といった複数の部門をまたがった形で存在しているので、簡単にはオーナーを決められないという実情があるようです。

 CIOの役目は、そうした事情も踏まえたうえで、ビジネスプロセス全体の改善プロジェクトをリードすることにあります。プロジェクトの実際の進め方としては、とにかくIT活用が効果的であることを社内的に早く認識してもらうことが大事なので、まずは小さなパイロットプログラムをいくつか実行して具体的な成果を見せると。そういうアプローチを取っているCIOもいます。

――ビジネスプロセスごとのオーナーがいないとなると、CIOにかかる負担は少なくないですね。改善プロジェクトをもっとスムーズに進められるような手立てはないのですか。

Roberts ビジネス部門とIT部門が協力した形で、「ビジネスプロセス コンピテンシーセンター」を設置するという方法があります。そして、このセンターですべてのビジネスプロセスをマッピングして、それぞれのパフォーマンスを見るための指標をつくってチェックしていくのです。

小西一有氏 小西一有氏

小西 ビジネスプロセス コンピテンシーセンターとは、ビジネスプロセスを改善するための専門組織です。そこで指標を作るというのがミソですが、分かりにくいかもしれませんので、表現を替えて説明しましょう。

 最大のポイントは、プロセスごとに何をするかを決めるのではなく、プロセスごとに何をマネジメントするのかを先に決めることです。そうすると、個々のプロセスも定義しやすくなるのです。

――最後に、実際にユーザーとしてCIOを務められた経験をお持ちのRobertsさんから見て、CIOにとって最も重要なことは何ですか。

Roberts ITというのは、あくまでもビジネスに対して価値を提供することで存在し得るものです。その責任者であるCIOはどうあるべきかといえば、「ビジネスパーソンであれ」の一言に尽きます。

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