日本IBMは2月8日、2011年の事業方針について会見を開き、同社 代表取締役社長の橋本孝之氏が「2010年は“真のTrusted Partner(信頼できるパートナー)になる年”としていたが、2011年は“真のTrusted Partnershipを進化(Evolve)させ、深化(Enhance)させる年”にする」と述べた。
“真のTrusted Partner”を目指した2010年、日本IBMでは「自由闊達(かったつ)な企業文化を醸成する」「顧客の価値創造をリードする」「新規ビジネスの拡大とパートナーシップを強化する」「良き企業市民として社会的責任を果たす」という4つの分野に注力してきた。
その成果として橋本氏は、「自由闊達な企業文化という面では、部長以上の職位を外部から55人中途採用した。また、海外派遣プログラムを倍増し、80人以上の社員に半年間の海外勤務を経験させた。顧客の価値創造という面では、全世界のIBMにて推進している“Smarter Planet”というビジョンの下、都市のスマート化および企業のスマート化に向けた実証実験やソリューションを定義した。また、クラウドを本格的に推進すべく、社長直属の部署を新たに立ち上げたほか、ハードウェア製品の一新やソフトウェア分野の買収で製品を拡充した。新規ビジネスの拡大という面では、営業部門に6つの顧客専任組織を新設した。また、パートナー&広域事業やアライアンス事業部も新設している」と説明した。
橋本氏によると、2011年も基本的な4つの注力分野は変えることなく、それぞれの分野において新たな取り組みを推進するという。
まず、自由闊達な企業風土の醸成に向け、2011年も引き続き80人以上の社員を半年間の海外研修に派遣する。2010年の派遣先は米国をはじめとする先進国が中心だったが、「2011年は、派遣する社員の3分の1を新興国に送り出す」と橋本氏。同時に、新興国のIBM社員も受け入れるとしている。また、性別や国籍、障害にかかわらず多様な社員を受け入れる文化は古くからIBMに存在していたが、「2011年は新たに社歴の違いというダイバーシティに注目し、特に若い社員がいかに楽しく働けるか、役員と社歴の浅い社員とで討議している」という。さらに、サービス部門のスキルと生産性を強化するため、プロジェクトマネージャーやITスペシャリスト、アーキテクトを育成するほか、アプリケーション開発の標準化および工場化と、開発環境のクラウドへの移行を推進するとしている。
顧客の価値創造をリードするにあたっては、「Smarter Planetをさらに推進する」と橋本氏。その中で、都市のスマート化に向けた体制を強化するため担当部門を新設したほか、自治体や他業種企業とのパートナーシップを拡充しようとしている。橋本氏は、「これまでは実証実験やソリューションの定義にとどまっていたが、2011年はリアルな世界で都市のスマート化が展開する年になる」としている。また、企業のスマート化に向けても、7つのソリューション責任者とグローバルソリューションCTOを任命したという。