日本オラクルは4月12日、メインフレーム上のアプリケーションをオープン系環境に移行するためのミドルウェア製品「Oracle Tuxedo ART 11g R1」の提供を開始した。「Oracle Tuxedo Application Runtime for CICS and Batch 11g R1」と「Oracle Tuxedo Application Rehosting Workbench 11g R1」の2製品で構成される。
前者のTuxedo Application Runtime for CICS and Batchは、メインフレームのトランザクション処理のためのミドルウェアである「Customer Information Control System(CICS)」上のアプリケーションやジョブ制御言語(Job Control Language:JCL)によるバッチプログラムを実行するものだ。後者のTuxedo Application Rehosting Workbenchは、メインフレーム上のアプリケーションをオープン系環境に移行するためのものだ。
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Tuxedo Application Runtime for CICS and Batchが実行環境、Tuxedo Application Rehosting Workbenchが移行ツールとなり、メインフレーム上のアプリケーションをオープン系システムに再ホスティングする。分散型トランザクション処理を実行するためのミドルウェアである「Oracle Tuxedo 11g R1」の上で稼働する。今回発表された実行環境と移行ツールを活用することで、IBMメインフレーム上のアプリケーションの移行で生じるリスクを低減しつつ、作業を迅速化できるという。
Tuxedoは、もともとはOracleが2007年10月に発表し、2008年に買収を完了したBEA Systemsの製品だ(BEAにはアプリケーションサーバ「WebLogic」があり、この製品もオラクルから提供されている)。日本オラクルの清水照久氏(Fusion Middleware事業統括本部ビジネス推進本部シニアディレクター)は、現在のTuxedo 11gの設計方針について、(1)メインフレームアプリケーションのリホスト基盤、(2)CやC++、COBOLで書かれてあるミッションクリティカルなアプリケーションサーバ、(3)CやC++、COBOLで書かれたアプリケーションのサービス指向アーキテクチャ(SOA)サービス化――という3点を掲げている。
(1)はリホスティングプロジェクトのコスト削減とROI期間の短縮を狙い、(2)では、スケーラビリティと可用性の強化とともに、操作性に優れた監視ツールを視野に入れ、(3)で新しいプログラミングモデルと標準規格に準拠した相互運用性を図ろうとしている。
現在のTuxedo 11gは、既存のメインフレーム資産を最大限に生かしながらオープン化することを狙っている。清水氏によれば、Tuxedoを活用すれば「メインフレームの維持費用と比較して、50~80%ものコストを削減できる」という。それでいて、「オープン環境でメインフレームクラスの“RASP(Reliability、Availability、Scalability、Performance)”も提供できる」と説明する。システムを停止させずにサーバを動的に追加し、障害が起きても自動的にフェイルオーバを実現できるとしている。主要なUNIXやLinux上で稼働する。
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今回発表されたTuxedo Application RuntimeはCICSアプリケーションの実行基盤であり、アプリケーションコードを変更する必要がなく、IBMメインフレームの専用ターミナルである3720のユーザーインターフェースに変更を加える必要がないため、操作性も維持できるという。移行後はSOA環境とシームレスに連携できるとともに、リホストされたサービスはSOAですぐに使用できるようになるとしている。
またTuxedo Application Runtimeであれば、バッチジョブに関しても、IBMのバッチジョブ管理と同様な実行環境を提供すると説明する。バッチジョブ管理用にIBMの「Job Entry Subsystem 2(JES2)」と同様なバッチジョブ管理システム「TuxJES」が提供される。Tuxedo Application Runtimeでのバッチ処理は、JCLのジョブ構造とフローをそのまま維持しながら、kshによるシェルスクリプトから呼び出されるアプリケーションや各種ユーティリティはIBMメインフレームと同様の実行環境で動作させられるとしている。