ドクター・中松氏のイノベーションへのアプローチ - (page 2)

飯田哲夫 (電通国際情報サービス)

2011-04-19 08:00

なぜ注目するのか?

 石原慎太郎氏、東国原英夫氏、小池あきら氏、渡邉美樹氏と有力候補はあれど、毎回都知事選になるとドクター・中松氏が気になる。それは、支離滅裂な印象ではありながらも、実現したい何かからスタートするドクター・中松氏の楽観的なイノベーションへのアプローチにある。

 イノベーションにしろ、企業の戦略にしろ、何かを実現しようとすると、現在手元にあるもの(資金、人的リソース、技術などなど)からできることを積み上げる方法と、実現したいビジョンをまず描いて、そこへ向けたプロセスを詰めるという方法がある。

 往々にして手元にあるものからスタートすると、寂しい未来が描かれ、実現したいものからスタートすると、非現実的なプランが描かれる(ちなみに、民主党の政策はその双方が中途半端にミックスされているので、誰からも支持されない)。この二つのアプローチは、それぞれメリットとデメリットがあるから、どちらが良いというものではない。そのメリットやデメリットは、その時の状況によりどちらかが強くなり、どちらかが弱くなるというものだからだ。

 今の日本の置かれている状況、つまり目先の大きな成長が見込めず、財政赤字が積みあがり、そこへ未曾有の震災に襲われた時、手元にあるものから積み上げると、なかなか夢を持てるような明日は描くことができない。こういう時こそ、実現したいビジョンからスタートして、そこへ向けて危機を乗り越える力を生み出すというプロセスが求められる。

 そうした意味で、「あんなことできたらいいな」というドラえもん的なドクター・中松氏のイノベーションへのアプローチは、何故か憎めないのである。あるいは、潜在的にこういう発想と実現力が組み合わさった、誰かが出てこないかという潜在的欲求を刺激するのかもしれない。

 ちなみに、ドクター・中松氏の理論によれば人間は144歳まで生きることが可能であり、本人はまだ中年であると主張している。故に、これから何度も都知事選には登場することになる。また、ドクター・中松氏のフロッピーディスクは今でも買える。しかもサイン入り。

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飯田哲夫(Tetsuo Iida)

電通国際情報サービスにてビジネス企画を担当。1992年、東京大学文学部仏文科卒業後、不確かな世界を求めてIT業界へ。金融機関向けのITソリューションの開発・企画を担当。その後ロンドン勤務を経て、マンチェスター・ビジネス・スクールにて経営学修士(MBA)を取得。知る人ぞ知る現代美術の老舗、美学校にも在籍していた。報われることのない釣り師。

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