英国のスモールビジネス向けソーシャルレンディング

飯田哲夫 (電通国際情報サービス) 2011年04月26日 08時00分

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 イギリスのソーシャルレンディング企業である「Funding Circle」が250万ポンド(約3億4000万円)のファンドレイズを行った(Finextra誌)。従来の個人対個人のソーシャルレンディングと異なり、Funding Circleはスモールビジネスへの融資に特化したサービスで、昨年8月の立ち上げ以来、4000件、1150万ポンド(約15億5000万円)の融資を実行したという。

 このニュース、ソーシャルレンディングが個人からスモールビジネスへ拡張したというだけではなく、イギリスにおける銀行の機能不全に端を発しているようである。

スモールビジネスへの融資が滞るイギリス

 イギリスでは昨年来、スモールビジネスへの融資が滞っていることが問題となっているらしい。つまり、それがリーマンショック以降の景気低迷からの脱却を遅らせているというのである。昨年のBBCの記事では、政府が銀行へ融資額目標を課そうとしていることに対し、バークレイズ銀行が反発していることが取り上げられている。

 そして、その同じ記事に、銀行の機能を補うものとして、スモールビジネス向けソーシャルレンディングが取り上げられている。つまり、銀行経由で資金がスモールビジネスへ流れないなら、銀行をバイパスして個人から直接に企業へ届くルートを作ろうというわけである。

拡張するソーシャルレンディング

 2010年8月にサービスをスタートしたFunding Circleは、 期間1年もしくは3年で5000ポンド(約68万円)~5万ポンド(675万円)を借りることができる。冒頭に書いた通りで、約8カ月で4000件の融資が実行されている。

 借入申込の審査はFunding Circleが銀行が用いるのと同様の情報にて行うから安心であるとしている。貸し手は借入企業のリスク区分、企業情報、クレジットスコア、財務情報などを基に、一定期間内に金額と希望金利をビッドする。このあたりの仕組みは一般的なPtoPレンディングと同様である。

銀行と同じ判断基準

 ただ気になるのは、Funding Circleが、銀行と同じ情報で審査しているからリスクはコントロールされているとしている点である。そもそも銀行が貸し出していないのに、同じ情報で判断するFunding Circleだったら大丈夫というのは理屈に合わない。

 むしろ、銀行とは異なる判断基準をソーシャルレンディングでは持ち得るということが特徴であってほしいものである。つまり、財務情報だけでは見えてこない部分を、ソーシャルレンディングが持ち得るコミュニケーション力でカバーできるようになると面白い。

 例えば、投資家側がオンライン上で事業そのものを支援する活動を展開することで、単に融資を実行する以上の何かをもたらすことができれば、銀行とは異なる特徴を出すことができる。さもないと、景気が浮揚してくれば、スモールビジネス向けのソーシャルレンディングの役割は減じてしまうだろう。

日本における状況

 日本においても資金が貸し出しに回りにくい状況というのは同様である。個人の金融資産は預金が未だに増加し続け、それは企業向け融資の増加には必ずしも繋がらず、銀行による国債投資へ振り向けられているのが実情である。ただ、この場合も、単に銀行をバイパスしてスモールビジネスへ資金が提供されれば良いというものではなく、いかにして成長へ繋げていけるかが課題となる。

 欧米に比べれば日本のソーシャルレンディングは黎明期にあり、主たる対象は個人である。まずはオンラインで投資家と借り手を直接結び付けることによる効率性が売りとなるが、今後ソーシャル性そのものが生み出す付加価値が見えてくると面白くなるだろう。

Keep up with ZDNet Japan
ZDNet JapanはFacebookページTwitterRSSNewsletter(メールマガジン)でも情報を配信しています。また、現在閲覧中の記事は、画面下部の「Meebo Bar」を通じてソーシャルメディアで共有できます。

飯田哲夫(Tetsuo Iida)

電通国際情報サービスにてビジネス企画を担当。1992年、東京大学文学部仏文科卒業後、不確かな世界を求めてIT業界へ。金融機関向けのITソリューションの開発・企画を担当。その後ロンドン勤務を経て、マンチェスター・ビジネス・スクールにて経営学修士(MBA)を取得。知る人ぞ知る現代美術の老舗、美学校にも在籍していた。報われることのない釣り師。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

関連ホワイトペーパー

SpecialPR

連載

CIO
研究現場から見たAI
ITは「ひみつ道具」の夢を見る
内製化とユーザー体験の関係
米ZDNet編集長Larryの独り言
今週の明言
「プロジェクトマネジメント」の解き方
田中克己「2020年のIT企業」
松岡功「一言もの申す」
林 雅之「デジタル未来からの手紙」
谷川耕一「エンプラITならこれは知っとけ」
Fintechの正体
内山悟志「IT部門はどこに向かうのか」
情報通信技術の新しい使い方
三国大洋のスクラップブック
大河原克行のエンプラ徒然
コミュニケーション
情報系システム最適化
モバイル
通信のゆくえを追う
セキュリティ
サイバーセキュリティ未来考
セキュリティの論点
ネットワークセキュリティ
スペシャル
Gartner Symposium
企業決算
ソフトウェア開発パラダイムの進化
座談会@ZDNet
Dr.津田のクラウドトップガン対談
CSIRT座談会--バンダイナムコや大成建設、DeNAに聞く
創造的破壊を--次世代SIer座談会
「SD-WAN」の現在
展望2017
IBM World of Watson
de:code
Sapphire Now
VMworld
Microsoft WPC
HPE Discover
Oracle OpenWorld
Dell EMC World
AWS re:Invent
PTC LiveWorx
古賀政純「Dockerがもたらすビジネス変革」
さとうなおきの「週刊Azureなう」
誰もが開発者になる時代 ~業務システム開発の現場を行く~
中国ビジネス四方山話
より賢く活用するためのOSS最新動向
「Windows 10」法人導入の手引き
Windows Server 2003サポート終了へ秒読み
米株式動向
実践ビッグデータ
日本株展望
ベトナムでビジネス
アジアのIT
10の事情
エンタープライズトレンド
クラウドと仮想化