災害に立ち向かうコラボレーションの力--sinsai.info - (page 2)

富永恭子 (ロビンソン)

2011-06-17 21:29

震災発生、その3時間半後に開発チームは結成された

 2011年3月11日午後2時46分、宮城県沖でM9.0の地震が発生した。「東日本大震災」と名付けられたその地震は、東北地方に甚大な被害をもたらしただけでなく、これによって発生した巨大津波が太平洋沿岸の町や村を次々と襲い、多くの人命と家財を奪っていった。被害は史上稀に見る広域にわたり、電力、ガス、水道などのインフラが大きなダメージを受け、電波塔は流されて携帯電話も通じなくなった。

 三浦氏自身も、仙台に住む義理の両親と連絡が取れなくなっていた。「今回の震災で特異的だったのは、被災地から離れた東京でも電話網の輻輳(ふくそう)が起こり、全国的な規模で障害が発生したことだった」と三浦氏はいう。それに対してインターネットは比較的無事だった。その中でも、ソーシャルメディアがリアルタイムの情報源として多くの人に活用された。特にTwitterの活用は爆発的で、携帯電話が不通の中、被災地とその他の地域を結んだのである。

 地震直後、津波の被害をテレビのニュースで見た三浦氏は、「一人ひとりに何ができるのかは分からないが、日本の災害対策で行動するときだ」と考えた。そこで、さっそくOSMFJの仲間に向けて、メーリングリストで今回の震災に対する「クライシスマッピング」の開始を宣言した。

メーリングリストへの投稿
三浦です。 日本の災害対策で行動するときだとおもいます。 準備が出来ていませんが、動ける方、グローバルの支援も得ながら対応しましょう。 Skypeにて議論を開始したいと思います。 オンラインになれるかた、Skypeへお願いします。

発信時間は3月11日の18時19分、地震発生から約3時間半後だった。

「sinsai.info」始動!

 OSMの「地図づくり」で救援活動をバックアップするチームを形成し、これを東北沖地震震災情報サイトとして被災地の現状を把握するために活用しようというのが三浦氏の考えだった。これに応じて、OSMFJのメンバーの有志が連絡を取り合った。

OSMFJのメンバー。前列左が三浦氏、前列右が合同会社Georepublic Japanの関治之氏、後列左がシリウステクノロジーズの沼尻舞氏、後列右が株式会社マップコンシェルジュの古橋大地氏 OSMFJのメンバー。前列左が三浦氏、前列右が合同会社Georepublic Japanの関治之氏、後列左がシリウステクノロジーズの沼尻舞氏、後列右が株式会社マップコンシェルジュの古橋大地氏※クリックで拡大画像を表示

 3月11日18時27分、クラウドソーシングを構築するオープンソースソフトウェア「Ushahidi」をプラットフォームとした災害情報サイト「sinsai.info」が構築され、OSMFJメンバーの個人サーバで公開した。同時に各関係機関に、地図の背景画像として衛星画像を使用できるように申請を開始。その結果、JAXAから震災の翌日に観測された衛星写真の画像が提供された。

 3月12日、sinsai.infoは第一報のレポートを掲載して本格的に稼動を開始させた。しかし3月13日には、サーバリソースが不足してきたため、クラウドへ移行することになった。これに対応するため、TwitterでUbuntu、Amazon EC2、Ushahidiの開発エンジニアのボランティアを呼びかけたところ、その日のうちに約30人の開発者が応じたという。

 3月14日、Amazon EC2への移行を完了し、同時に日本語で検索できないなどの不具合いを修正したころには、sinsai.infoのレポートは1500件を超え、開発チームの規模も40人を超えていた。開発チームはさらに増え続け、3月17日には70人を超えた。

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

ZDNET Japan クイックポール

マイナンバーカードの利用状況を教えてください

NEWSLETTERS

エンタープライズ・コンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]