データベース(DB)マシン「Oracle Exadata」の採用が加速している。日本オラクルは7月8日、新たに5社がExadataを採用したと発表した。
同社は4月にも同様に5社のExadata採用を発表しているが、わずか3カ月でまた5社を発表できるのは、Exadataの導入が進んでいることを裏付けていると指摘できるだろう。
今回の発表で「社名を公表してもいいというExadata採用企業は23社」(広報室)になる。社名を公表したくない企業も含めると、すでに稼働している、採用を決定している企業の数は相当数に上ることが容易に想像できる。今回発表されたのは以下の5社。
- 旭食品:営業支援系データウェアハウス(DWH)
- NTTぷらら:データ管理基盤システム
- KDDI:移動体コアネットワーク向け認証DBシステム
- 野村総合研究所(NRI):基幹系システムでの大量データの検索・集計基盤
- ポイント:統合DB基盤
高知市で一般加工食品や低温食品などを取り扱う総合食品卸事業の旭食品は従業員2041人、連結売上高は3639億7900万円(2010年3月期)。同社は営業担当者の情報武装を支援するために、実績データを蓄積するDWHを再構築することになり、膨大なデータを迅速に処理できるという高性能と高可用性を実現するためにExadataを選んでいる。同社の以前のDWHは「Oracle Database 9i」をベースにしており、Exadataに入っている「Oracle Database 11g」に対してノウハウなどを活用できることもExadata選択の理由になっている。
NTTぷららは、映像配信サービス「ひかりTV」で、ユーザー数の急速な増加に伴って、サービス利用認証や契約情報、購入履歴、課金履歴など各種履歴管理をつかさどるデータ管理基盤システムとしてExadataを選んでいる。データ管理基盤システムは超高速システムが求められており、基盤としてExadataを選択したのに加えて、サービスの無停止運用を展開するために、インメモリデータグリッドソフトウェア「Oracle Coherence」の選択も決定している。Coherenceは、複数のハードウェアから構成されるサーバ群で仮想的な共有メモリを確保して、大量のデータを高速処理するというもの。従来のシステム構成と比較して、料金計算のバッチ処理時間を90%短縮することに成功しているという。
KDDIの移動体コアネットワーク向け認証DBシステムは、提供する携帯電話サービスのauの利用者の加入情報、接続情報を管理するもの。KDDIは、この認証DBシステムにはExadataのほかに、インメモリDB「Oracle Times Ten In-Memory Database」、UNIXサーバ「Sun SPARC Enterprise M4000」を活用している。システムの稼働は12月を予定している。
NRIは、基幹系システムでの大量データの検索・集計に加えてバッチ処理の強化とリアルタイムなデータ連携による品質向上を目的に、Exadataの採用を5月に決定している。このシステムでは、リアルタイムデータ統合ソフトウェア「Oracle GoldenGate」も採用されている。
ポイントは、カジュアル衣料や雑貨を販売、国内706店舗、海外41店舗の計747店舗を運営している。同社は統合DBとしてIBMの「DB2」をOracle DBに統一して、その基盤としてExadataを活用する。
今回の5社のうちDWHとしてExadataを活用する企業は旭食品の1社だけだ。そのほかの4社は基幹系システム基盤としてExadataを選択している。つまり、基幹系システムでオンライントランザクション処理(OLTP)に力を発揮できるOracle DBがあるから、Exadataを選んだとも言える。基幹系システムとしてOracle DBを活用するのならば、より高速で導入しやすいものとしてExadataを使いたいというユーザー企業の意向が見えてくる。
Exadataは2008年9月の「Oracle OpenWorld 2008」でお披露目となり、当初は“DWHアプライアンス”として喧伝されていた。DWHアプライアンスの先駆者とも言えるNetezza(現在はIBMに買収)に対抗するために、こうした枕詞を使っていた。
だが、2009年にOracleがSun Microsystemsを買収し、その年の9月にSunの技術を全面的に採用したExadata Version 2となってからは、ExadataはDBマシンという枕詞が付くようになっている。Exadataについて、Oracleの最高経営責任者(CEO)のLarry Ellison氏曰く「OLTPとDWHの両方の用途に向けてデザインされている」。こうした設計であることから、Exadataの用途について「基幹系と情報系の混合ワークロードで使われるユーザー企業が最近は多くなっている」(広報室)という。