ダウンタイムゼロでパッチを適用
Oracle Linuxでは「Ksplice」と呼ばれる機能も提供される。この機能は、システムを停止させることなくLinuxにパッチを適用させるためのものだ。現在、Linuxをベースにした企業の情報システムの場合、セキュリティパッチを適用するには「課題がある」とScreven氏は説明する。
セキュリティパッチがリリースされた後、そのアプリケーションのオーナーとサービス停止時間を交渉することになる。つまりリリースされてから「数日あるいは数週間後」(Screven氏)に、アプリケーションサーバとデータベースサーバをシャットダウンしてからLinuxにパッチを適用、全サーバを再起動し、動作を確認するという流れだ。
「セキュリティパッチは適用されたものの、システムの脆弱性は数日から数週間放置される状況だ。適用するためにアプリケーションのダウンタイムも無視できるものではない」(Screven氏)
Kspliceの機能を活用すれば、こうしたダウンタイムをゼロにすることができる。Oracleが通常のカーネルパッチを作成し、Kspliceでゼロダウンタイムアップデート用にカーネルパッチを変換する。変換されたカーネルパッチを同社の「Unbreakable Linux Network」経由でユーザー企業は受け取り、Kspliceクライアント経由で稼働中のシステムにパッチを適用することになる。Screven氏は「Oracle Linuxだけがゼロダウンタイムでパッチを適用できる」と、そのメリットを強調する。

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Kspliceは、サポートサービス「Oracle Premier Support」を契約するユーザー企業が利用できる。Screven氏はOracle Linuxと競合のRed Hat Enterprise Linuxのサポートサービスを比較して、Oracleの方がより多くのサービスをより安いコストで提供できると、その優位性を強調している。
Screven氏はOracle Linuxについて「OracleがOracle製ソフトウェア向けに推奨するLinux」と説明。同社のデータベースサーバ専用機「Oracle Exadata Database Machine」やアプリケーションサーバ専用機「Oracle Exalogic Elastic Cloud」、10月上旬に開催された同社イベント「Oracle OpenWorld 2011」で発表されたビジネスインテリジェンス(BI)専用機「Oracle Exalytics Business Intelligence Machine」とビッグデータ専用アプライアンス「Oracle Big Data Appliance」は、OSとしてOracle Linuxを基盤にしており、「ExadataやExalogic、Exalyticsのパフォーマンスを最大限引き出す」(Screven氏)という。
本番環境のワークロードに最適化
一方のサーバ向けハイパーバイザのOracle VMはライブマイグレーションや高可用性、動的なリソース管理、電源管理の自動化といった機能を搭載している。ゲストOSとしてはOracle LinuxとOracle Solaris、Microsoft Windowsをサポートし、x86とSPARCという2つのアーキテクチャ向けが提供されている。
Oracle VMはOracle Linuxと同様に、Oracle製品に最適化されており、「本番環境のデータベースとミドルウェアのワークロードを動かすために設計されている」(Screven氏)という。Oracle VMもまた、Exalogicなどのハードウェアとソフトウェアを一体化して開発する、同社独自の開発コンセプト“Engineered System”に基づいた製品群に採用されている。
新版のOracle VM 3.0では、管理ツールの「Oracle VM Manager」が大幅に改良されている。ポリシーベースで電源やリソースの管理が可能になるとともに、ネットワークとストレージの構成を集中管理できるようにもなっている。1つのコンソールで複数の仮想マシン(VM)を管理できるようにもなっている。
1VMあたり128の仮想CPU、メモリ1Tバイトをサポートする性能が強化されたOracle VM 3.0ではまた、異なるハイパーバイザ同士でVMのイメージファイルをやり取りするための標準フォーマット「Open Virtualization Format(OVF)」に対応、OVFに準拠したVMイメージをVM Managerからインポートできる。