「ビッグデータ」に対するサーチエンジンからのアプローチ - (page 2)

栗原潔 (テックバイザージェイピー) 2011年11月04日 15時29分

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 印刷

Autonomy買収で「ビッグデータ」進出を狙うHP

 MicrosoftがFast Search & Transfer(FAST)を買収したことで、独立系サーチエンジンベンダーにおけるトップの位置にあったのがAutonomyだ。しかし、2011年10月にAutonomyもHPに買収されることになった。この買収でHPは「ビッグデータ」分野への本格的進出を果たしたと両社の経営陣は述べている。

 なお、HPは2011年2月にDBMS階層ベンダーのVerticaを買収している。Verticaは一般にカラム指向と呼ばれるアーキテクチャを採用したDBMSだ。特定の分析アプリケーションではきわめて高い性能を発揮できる。Sybase IQなども同カテゴリーの製品だ。

 「ビッグデータ」市場への参入においてカラム指向DBMS、そして企業内サーチエンジンというニッチではあるが十分に大きな市場セグメント、いわば「ビッグ・ニッチ」にフォーカスするHPの戦略は評価できる。しかし、Autonomyの買収については、100億ドルという買収金額が高すぎたのではないかという市場の評価がある。Autonomyの発表に伴いHPの株価が下落したのはそのひとつの表れだ。(買収条件を決定した際のCEOであるレオ・アポテカー氏はその後、事実上解任されたが、Autonomyの買収契約はキャンセルできない内容だったようだ)

台頭するオープンソースサーチのLuceneとLucid Imagination

 Autonomyの買収金額が高すぎたと判断される理由のひとつは、オープンソースのサーチエンジン、特にLuceneの台頭だ。

 前述のとおり、サーチエンジンの基本的アルゴリズムは十分に枯れてきている。これは一般的に、オープンソースソフトウェアが台頭するタイミングだ。Luceneはオープンソースのサーチエンジンの中でも、そのスケーラビリティやコミュニティの層の厚さなどで最右翼と考えられており、Twitter、eBay、Yammer、LinkedIn、Salesforce.comなどのネット系企業、さらにはFordやEMCなどで実績を積んでいる。

 もちろん機能だけを比較すればLuceneは商用サーチエンジン、特に前述のAutonomyに劣る。しかし、「必要にして十分」が「クラス最上級」を追い落としてきたケースは、ITの歴史で頻繁に見られる。Autonomyやその他の商用サーチエンジンがLuceneにより凌駕されることは考えにくいが、下位分野からの浸食は続くだろう。これは、LinuxがOS市場に、そして、MySQLやPostgreSQLがRDBMS市場に対して及ぼしてきた影響とまったく同様だ。

 オープンソースソフトウェアのエコシステムにおいて不可欠な要素がディストリビューター、つまりLinuxにおけるRed Hatのような存在だが、Luceneの場合、これにあたる企業はLucid Imaginationだ。筆者は、2011年5月に同社が主催した開発者向けイベント「Lucene Revolution」に出席してきたが、まさに盛り上がりつつあるエコシステム特有の熱気が感じられた。

 また、オープンソースゆえの柔軟性の高さにより、Luceneをベースにして付加価値を加えたソリューションのエコシステムの拡大も期待される。たとえば、ウチダスペクトラム、Attivio、Basis Technologyなどの企業がLuceneを活用したソリューションを提供している。

 一般企業における「ビッグデータ」テクノロジのロードマップとしては、RDBMS、(場合によって)カラム指向DBMS、そしてHadoopに加えて、企業内サーチエンジンを検討対象に加えるべきだ。Hadoopよりも優先してサーチエンジンを検討しなければならない企業も多いかもしれない。

Keep up with ZDNet Japan
ZDNet JapanはFacebookページTwitterRSSNewsletter(メールマガジン)でも情報を配信しています。現在閲覧中の記事は、画面下部の「Meebo Bar」を通じてソーシャルメディアで共有できます。

ZDNet Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

関連ホワイトペーパー

連載

CIO
月刊 Windows 10移行の心・技・体
ITアナリストが知る日本企業の「ITの盲点」
シェアリングエコノミーの衝撃
デジタル“失敗学”
コンサルティング現場のカラクリ
Rethink Internet:インターネット再考
インシデントをもたらすヒューマンエラー
トランザクションの今昔物語
エリック松永のデジタルIQ道場
研究現場から見たAI
Fintechの正体
米ZDNet編集長Larryの独り言
大木豊成「仕事で使うアップルのトリセツ」
山本雅史「ハードから読み解くITトレンド放談」
田中克己「展望2020年のIT企業」
松岡功「一言もの申す」
松岡功「今週の明言」
内山悟志「IT部門はどこに向かうのか」
林 雅之「デジタル未来からの手紙」
谷川耕一「エンプラITならこれは知っとけ」
大河原克行「エンプラ徒然」
内製化とユーザー体験の関係
「プロジェクトマネジメント」の解き方
ITは「ひみつ道具」の夢を見る
セキュリティ
セキュリティインシデント対応の現場
エンドポイントセキュリティの4つの「基礎」
企業セキュリティの歩き方
サイバーセキュリティ未来考
ネットワークセキュリティの要諦
セキュリティの論点
スペシャル
エンタープライズAIの隆盛
インシュアテックで変わる保険業界
顧客は勝手に育たない--MAツール導入の心得
「ひとり情シス」の本当のところ
ざっくり解決!SNS担当者お悩み相談室
生産性向上に効くビジネスITツール最前線
ざっくりわかるSNSマーケティング入門
課題解決のためのUI/UX
誰もが開発者になる時代 ~業務システム開発の現場を行く~
「Windows 10」法人導入の手引き
ソフトウェア開発パラダイムの進化
エンタープライズトレンド
10の事情
座談会@ZDNet
Dr.津田のクラウドトップガン対談
Gartner Symposium
IBM World of Watson
de:code
Sapphire Now
VMworld
Microsoft WPC
Microsoft Connect()
HPE Discover
Oracle OpenWorld
Dell Technologies World
AWS re:Invent
AWS Summit
PTC LiveWorx
吉田行男「より賢く活用するためのOSS最新動向」
古賀政純「Dockerがもたらすビジネス変革」
中国ビジネス四方山話
ベトナムでビジネス
日本株展望
企業決算
このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]