Autonomy買収で「ビッグデータ」進出を狙うHP
MicrosoftがFast Search & Transfer(FAST)を買収したことで、独立系サーチエンジンベンダーにおけるトップの位置にあったのがAutonomyだ。しかし、2011年10月にAutonomyもHPに買収されることになった。この買収でHPは「ビッグデータ」分野への本格的進出を果たしたと両社の経営陣は述べている。
なお、HPは2011年2月にDBMS階層ベンダーのVerticaを買収している。Verticaは一般にカラム指向と呼ばれるアーキテクチャを採用したDBMSだ。特定の分析アプリケーションではきわめて高い性能を発揮できる。Sybase IQなども同カテゴリーの製品だ。
「ビッグデータ」市場への参入においてカラム指向DBMS、そして企業内サーチエンジンというニッチではあるが十分に大きな市場セグメント、いわば「ビッグ・ニッチ」にフォーカスするHPの戦略は評価できる。しかし、Autonomyの買収については、100億ドルという買収金額が高すぎたのではないかという市場の評価がある。Autonomyの発表に伴いHPの株価が下落したのはそのひとつの表れだ。(買収条件を決定した際のCEOであるレオ・アポテカー氏はその後、事実上解任されたが、Autonomyの買収契約はキャンセルできない内容だったようだ)
台頭するオープンソースサーチのLuceneとLucid Imagination
Autonomyの買収金額が高すぎたと判断される理由のひとつは、オープンソースのサーチエンジン、特にLuceneの台頭だ。
前述のとおり、サーチエンジンの基本的アルゴリズムは十分に枯れてきている。これは一般的に、オープンソースソフトウェアが台頭するタイミングだ。Luceneはオープンソースのサーチエンジンの中でも、そのスケーラビリティやコミュニティの層の厚さなどで最右翼と考えられており、Twitter、eBay、Yammer、LinkedIn、Salesforce.comなどのネット系企業、さらにはFordやEMCなどで実績を積んでいる。
もちろん機能だけを比較すればLuceneは商用サーチエンジン、特に前述のAutonomyに劣る。しかし、「必要にして十分」が「クラス最上級」を追い落としてきたケースは、ITの歴史で頻繁に見られる。Autonomyやその他の商用サーチエンジンがLuceneにより凌駕されることは考えにくいが、下位分野からの浸食は続くだろう。これは、LinuxがOS市場に、そして、MySQLやPostgreSQLがRDBMS市場に対して及ぼしてきた影響とまったく同様だ。
オープンソースソフトウェアのエコシステムにおいて不可欠な要素がディストリビューター、つまりLinuxにおけるRed Hatのような存在だが、Luceneの場合、これにあたる企業はLucid Imaginationだ。筆者は、2011年5月に同社が主催した開発者向けイベント「Lucene Revolution」に出席してきたが、まさに盛り上がりつつあるエコシステム特有の熱気が感じられた。
また、オープンソースゆえの柔軟性の高さにより、Luceneをベースにして付加価値を加えたソリューションのエコシステムの拡大も期待される。たとえば、ウチダスペクトラム、Attivio、Basis Technologyなどの企業がLuceneを活用したソリューションを提供している。
一般企業における「ビッグデータ」テクノロジのロードマップとしては、RDBMS、(場合によって)カラム指向DBMS、そしてHadoopに加えて、企業内サーチエンジンを検討対象に加えるべきだ。Hadoopよりも優先してサーチエンジンを検討しなければならない企業も多いかもしれない。
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