データ分析領域では準備万端のIBM
IBMは「ビッグデータ」という言葉が流行りだす前からデータ分析分野で着実に力をつけてきている。BIツールベンダーのCognos、データ統合ソフトウェアのAscential、データウェアハウスアプライアンスのNettezaと、データ分析分野でのM&Aを継続してきた。DBMSについて言えば、OLTPの領域ではOracleの後塵を拝しているが、データウェアハウス分野では十分な競争力がある。
IBMの強力な差別化要素は、そのプロフェッショナルサービス組織にある。本特集の第1回では、統計、IT、ビジネスのスキルを兼ね備えた人材(「データサイエンティスト」と呼ばれることがある)の不足が「ビッグデータ」の活用における課題だと述べたが、グローバルに豊富な人材を擁するIBMはこの領域において顧客に価値を提供できる可能性が高い。
IBMのもうひとつの強みは長期的ビジョンだ。同社は、センサーを活用したスマートシティのビジョンを推進している。本特集の第4回でも述べたように、今後「ビッグデータ」の領域で新たな価値を生み出す不連続なイノベーションが最も期待されるのはセンサーが生成するデータの分析だ。そういった点からはIBMは最も総合的に「ビッグデータ」にアプローチできる立場にあると言えよう。
「ビッグデータ」の機会を十分に追求できていないSAP
SAPはインメモリデータベース製品のHANAを「ビッグデータ」ソリューションと位置付けている。
筆者の個人的な見解ではあるが、一般にインメモリデータベースを「ビッグデータ」のソリューションと位置付けるのはかなり無理がある。
インメモリデータベースは、メインメモリに収まる程度の比較的少量の(とは言ってもテラバイト級にはなる)データを超高速で処理するためのテクノロジであり、これを「ビッグ」と呼んでしまうのはかなり苦しい。なお、HANA、そして一般的にインメモリテクノロジを批判しているのではない。あくまでもSAPの製品のポジショニングが誤解を招くと言っているだけだ。
SAPが真の意味での「ビッグデータ」、つまり大容量データの分析を推進していく上では買収したSybaseの資産を活用することが重要ではないかと思う。特に、カラム指向DBMSであるSybase IQは、同じく買収したBIベンダーBusiness Objectsの資産も合わせ、「ビッグデータ」市場における強力な武器になると筆者は考える。
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