自動車メーカー経営トップが見せた「楽しさ」 IT業界は訴求しているか - (page 2)

大河原克行

2011-12-06 12:00

 ところで、展示内容とは異なるが、今回の東京モーターショーでもうひとつ感じたのは、自動車メーカーの経営トップが「自動車に乗る楽しさ」の訴求に力を注いでいた点だ。

 12月3日の一般公開日初日には、それを象徴する2つのイベントが用意された。

 ひとつは、各社経営トップが参加するパレードである。これは残念ながら雨天により中止となったが、関係者の声を集めると、トヨタ自動車の豊田社長は、初公開となるオープンカーを自ら運転する予定であったほか、本田技術研究 代表取締役 社長執行役員の山本芳春氏は、オートバイに乗ってパレードに参加する予定だったという。自ら自動車に乗る楽しさを伝えようと経営トップが真剣だったことの現れだ。

 もうひとつは、自動車メーカー5社のトップが参加したパネルディスカッション「5TOP TALK SUMMIT」である。ここには、トヨタ自動車、日産自動車、本田技術研究所、マツダ、三菱自動車の国内自動車メーカートップが参加。自社以外の思い入れのある車を、それぞれのエピソードを交えて語るという異例のトークが繰り広げられたほか、未来の自動車の形をそれぞれに語るといった、まさに自動車好きの集まりを彷彿させる内容だった。

 翻って、IT業界はどうだろうか。

 昨今のIT企業経営トップの発言などに目を転じてみると、自らがPCやスマートフォン、そして、それを利用したサービスに関する楽しさを、まったく訴求していないということに気がついた。

 ITも自動車も共通しているのは、ビジネスにも個人利用にも活用されるという点だ。PCやスマートフォンはその最たるものだろう。その点で、IT産業だけがビジネス向けだけからと「楽しさ」の訴求から逃れるわけにはいかない。

 自動車業界も決して順風満帆なわけではない。それでも経営トップのこうした取り組みは評価に値するものだ。業界を元気にする方策のひとつといえよう。

 こうしてみると、IT業界が低迷している理由のひとつに、経営トップから「楽しい」という情報が発信されていないことがあげられはしないか。

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