IT部門は「ユースケース」から学べ−−シトリックスCMO

柴田克己

2011-12-09 12:01

 仮想化プラットフォーム「XenServer」「XenDesktop」「XenApp」や、アプリケーションデリバリアプライアンス「NetScaler」をはじめとする、広範な製品を擁するCitrix Systems(シトリックス)。

 同社は2011年において、中小企業向けのデスクトップ仮想化オールインワンソリューション「VDI-in-a-Box」を持つKaviza、クラウドプロバイダー向けプラットフォームを提供するCloud.com、ファイル共有サービスを提供するShareFile、仮想デスクトップ移行ツールを提供するApp-DNAといった多数の企業の買収を行った。

 「アプリケーションサービス」「クラウド」「コンシューマライゼーション」というキーワードを軸に、「Personal Cloud」「Private Cloud」「Public Cloud」による「3つのクラウド」というコンセプトを提唱。これらに対応した技術、製品、サービスのポートフォリオを急速に拡大させている。

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 シトリックスが掲げる「3つのクラウド」の時代において、企業が従業員に使わせる「アプリケーション」は、サービスとして「配信」され、あらゆる環境やデバイスから利用できるものになる。そうした環境において、企業のIT部門に求められる役割は、現在のようなシステムの「構築」と「運用」よりも、サービスとして提供されるアプリケーションの「集約」と「編成」の比率が高まっていくという。

 この3PC時代の企業ITのあり方は、旧来の考え方からすれば過激にも見える大きな意識の変革をユーザー側にも求める。同社の戦略と、そのビジョンについて、シニアバイスプレジデント兼CMOを務めるWes Wasson氏に話を聞いた。

−−2011年の上半期には、ライセンスの売上ベースでXenDesktopのビジネスが51%、NetScalerが72%という高い成果が出ているということでしたが、この成長の要因はどこにあったと考えていますか?

Wes Wasson氏
Wes Wasson氏

 成功要因はそれぞれ違います。XenDesktopに代表されるデスクトップの仮想化については、「モビリティ」がその要因でしょう。この分野での動向を2年間見守ってきましたが、それは興味深いものでした。

 iPadの登場以前は、仮想デスクトップはメインストリームとなる技術ではないと思われがちでした。しかしiPadが登場すると、一般の従業員だけでなく企業の管理職にある人々にも、会社にタブレットデバイスを持ち込み、業務に使用したいというニーズが生まれるようになりました。企業のIT部門には、そうしたデバイスにセキュアな形で仕事のための環境を配信しなければならないという圧力がかかったのです。企業の経営層の人々は、そうしたデバイスにCitrix Receiverを入れることで、SAPやOracle、Microsoft Office Wordといったビジネスアプリケーションを利用できることを知りました。それが、導入を加速させたのではないかと思います。

 もうひとつの要因は「セキュリティ」です。データや知財の漏えいに関して、多くのニュースが出ることで、われわれの顧客も、そうした事態を心配するようになりました。その中で、すべてのデータをデータセンターで一元的に管理することが、セキュリティを確保する有力な方法であることが認められるようになり、そのことがデスクトップ仮想化の有用性を改めて認知させることにつながったのだろうと思います。

 3つ目は、業態や地域などで異なる事情によるものです。例えば、アウトソーシングがトレンドとなっているような地域や業態では、XenDesktopのような手段が、最も低コストで、セキュリティを保ちつつ、アウトソーシングを実現する手段となります。また、日本のように「事業継続性」の重要度が高まっている地域では、遠隔地からオフィスと同様の環境を利用できるデスクトップ仮想化の仕組みが有効であることが知られるようになりました。

 次にNetScalerの成長要因ですが、これには2つあります。ひとつは、仮想デスクトップの普及です。XenDesktopを導入するユーザーの多くは、接続のための信頼性と性能、セキュリティを保証するために、NetScalerを導入しています。もうひとつの要因は、大規模なパブリッククラウドサービスの普及です。大手のクラウドプロバイダーが、新たなサービスの発表に先駆けて、100台規模のNetScalerを導入するといった事例もありました。こうした動向は始まったばかりで、将来的に大きく伸びると考えています。

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