中堅中小企業、景気不透明感からIT投資を抑制--円高や欧州危機が影響

田中好伸 (編集部)

2011-12-20 15:26

 ノークリサーチの調べによると、中堅中小企業では、タイの洪水など一時的な影響に加えて、継続的な景気への不透明感がIT投資の抑制要因になっているという。同社では12月20日に「2011年 秋版」として調査レポートを発表している。

 同社のIT投資指標は「IT投資DI」と「経常利益DI」で構成される。IT投資DIは、今四半期以降のIT投資予算額が前四半期と比べてどれだけ増減するか、「増える」と「減る」の差で算出されるIT投資意欲指数となる。経常利益DIは、前回調査時点と今回調査時点を比較した場合の経常利益の変化を尋ね、「増えた」と「減った」の差で算出される経常利益増減指数になる。

 8月時点のIT投資DIと経常利益DIはどちらも震災直後からの大幅な落ち込みから回復する傾向が見られた。だが11月にIT投資DIは-8.5、経常利益DIは-8.4とほぼ横ばいになっている。

 経常利益DIは、いずれの年商帯でも「自社の販売や受注における数量が増加してきている」をプラス要因として挙げている。その一方で「震災に伴う自粛ムードによる消費活動の低下」や「震災によって影響を受けた企業からの発注減少」をマイナス要因として挙げている。このことから、震災からの回復が進むものの、影響がまだ残っている状況がうかがえるとしている。

 年商5億円未満と年商5億~50億円未満の企業層では、震災後の回復までにやや時間を要し、5~8月の経常利益DIの上昇は緩やか。回復の傾向は8~11月も続いているとしている。

 その一方で、年商50億円以上の企業層では「日本国内の需要はまだ回復していない」という回答も多く、震災後の持続的な回復基調には達しきれていないという判断が目立つという。年商100億円以上の企業層では、「タイの洪水に端を発する影響」を挙げる企業が2割に上り、工場被災による操業停止、エビなどの水産物の確保困難などが影響しているとみられる。

 IT投資DIでは、年商5億円未満での回復が顕著のように見えている。だが、IT投資を増やす理由の過半数は「現状を維持するため、ハードウェアやソフトウェアの更新が必要」であり、IT投資を減らす理由では「現状を維持する以外、特にITに対して投資をする必要はない」が8割弱となっている。不可避の更新需要はあるが、新たなIT投資への意欲が高まっているわけではない点に注意すべきと分析している。

 年商5億円以上の企業層では、IT投資を増やす理由として「業務効率を改善して、収益を向上させるシステム投資が必要」という新規の投資意欲と「現状を維持するため、ハードウェアやソフトウェアの更新が必要」という現状維持の理由がともに3~5割という状況にある。

 だが、IT投資を減らす理由として「IT投資の必要性は感じているが、それだけの投資余力がない」や「予定/計画しているIT投資はあるが、景気が不透明なため延期中」という回答も3~5割存在。円高や欧州政府の債務危機、新興国の成長鈍化などの経済環境に起因する厳しい見通しによって、投資の抑制傾向が続く可能性もある点に留意すべきとしている。

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