ゲーミフィケーションやソーシャルメディアを取り込んだ人材管理クラウド「SilkRoad」

大川 淳

2012-04-04 12:51

 米SilkRoad technologyの日本法人シルクロードテクノロジーが、今後の事業展開に関する方針を説明した。同社はクラウド経由で人材管理サービスを提供する事業を展開。サービスにゲームやSNSの考えを取り込み、クラウドに新たな分野を確立しようとしている。

 「以前と比べて状況は大きく変わっている」と述べるのは、SilkRoad technologyで最高マーケティング責任者(CMO)を務めるEdward Vesely氏だ。

 「日本では従業者のロイヤリティが高いといわれる。これは高い労働力の要因として重要なことだが、いまやこれは日本だけの話だ。米国ではこの10年でロイヤリティが大きく減退している。景気の後退で、レイオフが増えたり、企業間の買収合併が頻繁になったことが原因だろう。競争はいっそう激化しており、グローバル展開している日本企業にとって、世界各地で人材を確保することは難しくなってきている」(Vesely氏)

 日本でも変化は始まっている。内閣府の調査によれば、国内の新卒大学生の30%は入社後3年以内に離職しているという。

 Vesely氏は「企業の経営者が働きやすい環境を整えれば業績も上がっていく」と強調する。そのために同社が提唱しているのが「エンプロイー・エンゲージメント」だ。従業員の潜在能力を引き出し、会社の業績を向上させる環境をつくり出すことと定義される。

Edward Vesely氏
Edward Vesely氏

 「まずは従業員が満足して働ける環境が必要になるのだが、それだけでは十分ではない。彼らが満足しても、潜在力を発揮しているとは限らない。エンプロイー・エンゲージメントがあってこそ、彼らのパフォーマンスは最高に達する」(Vesely氏)

 同社は人材管理システムのスイート製品「SilkRoad Life Suite」を提供している。人材採用システムの「OpenHire」、内定者管理の「RedCarpet」、業績評価・目標管理の「WingSpan」、研修管理の「GreenLight」などで構成される。「当社の製品群は、従業員が仕事に邁進できるよう支援し、入社から退職に至るまでの流れを包括的に支えていけるもの」(同)だという。

 これらのソリューション群のポータル的なユーザーインターフェースである「SilkRoad Point」は、人材管理の各製品への入口であるとともに「いわばコンテンツ管理システムでもあり、コンテンツが制作された場合、これをエンジンとして発信、公開し、共有すること」(同)ができる。

 さらに特徴的なのは、ビジネスアプリケ−ションなどにゲームの考えを応用する「ゲーミフィケーション」が採用されていることだ。SilkRoad Pointでは従業員の行動に対して「ポイント」や「バッジ」が付与される。これらは数値化されるため「従業員があるプロジェクトに対し、どれほど影響力を発揮できたかなど、同僚が相互に評価できる」(同)仕組みとなっている。FacebookやTwitterなどのソーシャルメディアとも連携でき、iPadをはじめとするタブレット端末、モバイル機器でも利用できる。

 Vesely氏によれば、同社の従来製品を導入している大手自動車メーカーGeneral Motors(GM)では、高い効果があがっているという。

 「(同社製品の)導入によって、GMでは採用コストを削減し、従業員が入社当日から準備万端の状態で業務に臨めるようになった。彼らはSNSなどを通じて社内のどんな文脈で働けばよいのかを熟知していた。さらに、離職率も低減化している。従業員が満足して、ハッピーに働ける環境が構築されたといえる」(Vesely氏)

小野りちこ氏
小野りちこ氏

 国内では「JINS」ブランドでメガネ販売などを手がけるジェイアイエヌが、人材を多面的に捉える社内人事制度「360°フィードバック制度」を導入、クラウド型人材パフォーマンス管理「WingSpan」を採用した。「パソコンに慣れていない従業員にも使いやすく、販売店舗内のコミュニケーションが進むなどの効果があり、売り上げが向上した」(シルクロードテクノロジー取締役副社長の小野りちこ氏)という。

石橋愼一郎氏
石橋愼一郎氏

 シルクロードテクノロジー代表取締役社長の石橋愼一郎氏は、「人材管理アプリケ−ションはITの1つのトレンドだ。Forrester ResearchのCT0向け調査によれば、クラウドへの投資先として何を希望するかとの問いへの回答では、人材管理はCRMに次ぐ順位だった。我々も意を強くしている」と述べた。

 同社は独自の調査で、採用前に使う人事システムと従業員評価システムの市場規模がそれぞれ約800億円に上るとみている。今後は潜在的市場の掘り起こしを狙っていきたい考えだ。

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