クラウドによる経費管理ソリューションを提供する米コンカーが、昨年2月に日本法人を設立してちょうど1年が経過した。
この間、製品のローカライズや日本固有に求められる機能の開発などに着手。さらに日本法人の体制強化にも力を注いできた。2012年2月13日にはConcur Expense日本語正式サービスの提供をいよいよ開始。一気に事業を加速する考えだ。
コンカー日本法人の三村真宗社長に、日本における戦略について話を聞いた。
--まず、コンカーについて教えてください。
コンカーの三村真宗社長
三村:コンカーは1993年に設立した経費管理ソリューションを提供する企業です。フォーチュン500社のうち約50%がコンカーを導入し、日本でも約110社が利用しています。また、SaaSベンダーのなかでは米セールスフォース・ドットコムに次いで、第2位の売上高を誇ります。
2011年の売上高は3億4900万ドル。過去5年間で3.6倍の成長をみせている成長企業でもあります。それを裏付けるように、米フォーブス誌が選ぶ2011年の革新的な成長企業の世界ランキングでは、1位にランクされました。日本においては、2011年2月に日本法人を設立し、事業をスタートしています。セールスフォース・ドットコムのマーク・ベニオフ氏が当社(日本法人)に出資していますし、日本法人の取締役にはサンブリッジの創業者であり、CEOであるアレン・マイナーが名を連ねています。
--この1年間、どんなことに取り組んできましたか。
三村:製品面では、大きく2つの観点があります。ひとつは、ローカライズです。これまでにも日本語化したサービスを提供していたのですが、これはアウトソーシングを活用した日本語化であり、正直なところ細かい部分までは目が行き届いていなかった。日本法人として、しっかりとしたローカライズを行ったというのが、この1年の取り組みのひとつです。この成果は、2月13日から日本語正式サービスとして提供していくことになります。
もうひとつは日本市場に求められる独自機能の強化です。米国と違って日本のビジネスマンは、電車をはじめとする公共交通機関での移動が多く、経費精算においても、これらの細かい処理が求められます。そこで、SuicaやPASMOなどのICカード交通乗車券のデータを取り込んで、直接経費管理を行えるようにしました。PCにつないだリーダーにICカード交通乗車券を読み込ませると、自動的にConcur Expenseに接続して必要なデータだけを吸い上げます。結果として、経路や運賃を手入力せずに経費精算が可能になります。現場の従業員にとっても大幅な工数削減が見込めます。
また、ジョルダンの「乗換案内」と連動することにより、経路検索と運賃算出を可能としたことです。最新の運賃データを利用し、ひとつの画面で処理できますから、ここでも交通費や出張費に関する従業員の経費処理が簡便になり、正確性が増します。これらの機能も2月13日以降に提供することになります。
--製品面以外での取り組みにはどんなものがありますか。
三村:私は、2011年10月に日本法人の社長に就任したのですが、その直後から日本のお客様への訪問活動を開始しました。
驚いたのは、10社訪問すると、実に7割のお客様が初回訪問で見積もりがほしいというのです。コンカーのソリューションに対する期待値が高いということでもありますが、それとともに、日本において経費精算をなんとかしたいという潜在的ニーズが強いことを感じました。一方で、コンカーの知名度が低く、コンカーの製品を正しく検討していただけていないという課題もわかりました。
そうしたことから、この3カ月間はとにかくマーケティングとPRに軸足を置く期間としました。その集大成が2月13日に都内で開催する「コンカー クラウドフォーラム 2012」です。実は、コンカーは9月末が決算なのですが、それまで年間マーケティング予算の大半をこのクラウドフォーラムにつぎ込みました。