日本IBMは4月25日、同社のプロセッサ「POWER7」と「Linux」を搭載する新たなサーバ「PowerLinux 7R2」を発表した。x86サーバと同じ価格帯でありながら、より高い性能と信頼性、堅牢性を謳う新製品。ハードウェアレベルの仮想化を実現したことで、各リソースをより効率的に配分できるため、運用負荷を大きく削減できるとしている。
PowerLinux 7R2は、プロセッサにPOWER7(8コア、32スレッド) 3.3GHz×2もしくは同3.55GHz×2を搭載。コア数は16、搭載メモリは64GBもしくは32GB、そして2基の300GB HDDを備える。
最小構成価格は、CPUと搭載メモリの組み合わせによって構成が異なり、POWER7 3.3GHzと64GBメモリを搭載するモデルが135万5700円(税別)、POWER7 3.55GHzと32GBメモリを搭載するモデルが143万2800円。4月25日に販売を開始し、5月4日から出荷する。
日本IBM システム製品事業 パワーシステム事業部長の高橋信氏
日本IBM システム製品事業 パワーシステム事業部長の高橋信氏は、「サーバ本体の価格は他社よりも安い。ハードウェアとソフトウェアを組み合わせたシステムとしての価格でも、他社製品の価格をくぐる(低い)」とし、サーバ製品で競合するHPとDellの同スペック帯モデルを比較してみせた。
高橋氏は「他社が値引いてきても十分に戦える(価格)設計だ」と自信を見せる。
Linuxの世界にPOWERの堅牢性と信頼性を持ち込む
PowerLinux 7R2は「IBM Power Systems」ラインに位置づけられる。Power Systemsは、高いパフォーマンスと信頼性を強調するブランド。このラインにLinux専用モデルが登場したことになる。
PowerLinux 7R2では、同社の仮想化ソフトウェア「PowerVM」を搭載。ファームウェアに組み込まれるため、「ハードウェアレベルで仮想化を実施できる。柔軟でダイナミック(動的)に資源を配分・管理できる」(高橋氏)という。
日本IBM システム製品事業 エバンジェリストの新井真一郎氏
日本IBM システム製品事業 エバンジェリスト -Linux/OSS-の新井真一郎氏は、PowerLinux 7R2の性能を説明。PowerVMがファームウェアレベルで稼働するため、データベースアプリケーションで高いパフォーマンスが得られるとする。PostgreSQL 9とRed Hat Enterprise Linux(RHEL)6の組み合わせでは、最大で約35万トランザクション毎秒を処理することができたという。
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PostgreSQLについては、SRA OSSと協力してPOWERアーキテクチャに依存するPostgreSQLのコードを高速化。64スレッドまで拡張できることを実証した。
新井氏は「(PostgreSQLの)コミュニティでは、Intelのアーキテクチャで32までスケールできたなどの報告があった。我々はSRA OSS協力のもと、64スレッドまでスケールすることを実証している」とする。
高橋氏は、PowerVMによる仮想化と高いパフォーマンスによって「従来の1/5〜1/8のサーバ台数で必要なワークロードをさばくことができる」と強調する。
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また、PowerLinux 7R2は、マルチスレッド技術のSMTに加え、筐体内の高速データ転送技術によって、分散処理とも相性がいいという。MapReduceの処理では、同じ数のコアを搭載するx86サーバと比較して38%のパフォーマンス向上を果たした。RHEL6やSUSE Linux Enterprise(SLES)11の環境で、同時スレッド実行機能を「1コアあたり2スレッドから4スレッドまで拡張した」(新井氏)ことによる効果だ。データのロード時間についても、仮想マシン間の通信速度を高めることで、60%の性能向上を図っている。
また、多くのメインフレームがハードウェアレベルでRAS(信頼性、可用性、保守性)機能を実装しているが、PowerLinux 7R2もソフトウェアではなくハードウェアに組み込んだ。そのほか、稼働中のLPARやLPAR上で稼働するアプリケーションを、無停止で別の筐体に移動できる機能「Live Partition Mobility」にも対応する。
こうした特徴から、日本IBMではPowerLinux 7R2をビッグデータ、アナリティクス(分析)、Hadoop向けのサーバとして訴求したい考えだ。高橋氏は「(Linuxやx86の世界に)POWERの堅牢性と信頼性を持ち込む」とコメント。x86をしのぐパフォーマンスで、POWERをより使いやすくするとの方針を示した。
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