日本マイクロソフトのクラウドサービス「Office 365」が好調だ。米Microsoftの公式発表では、前身のサービス「BPOS」よりも8倍の早さで顧客が拡大しているという。
では、日本での採用状況はどうなっているのか。中小企業向けにOffice 365の拡販を担当する鷲見研作氏(日本マイクロソフト Officeビジネス本部 Officeマーケティング部 エグゼクティブプロダクトマネージャー)によると、「日本ではBPOS時代の10倍のスピードで顧客を獲得できている」そうだ。
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3月には一部メニューの価格を改定、約20%値下げした価格で提供している。「SharePoint Online Extra Storage」では10分の1まで価格を下げており、従来の1GBあたり月額251円のところを月額20円にまで下げた。
SMBの経営者は「社員に喜んでほしい」
Office 365のチームでは、大企業(エンタープライズ)を1000(PCの台数)以上、中堅(コーポレートアカウント)を250〜1000未満、中小企業(SMB)を250未満と定義している。
大企業の動向としては「慎重に判断している状況だ」と鷲見氏。採用にあたっては「最初に検討・評価したクラウドサービスが優位に立つことが多いようだ」とする。
一方、SMBについては「(従業員規模が)小さければ小さいほど評価要件が明確に定義されておらず、また身近なサービスを導入する傾向が強い」という。「特に従業員が40人未満で10年以上の歴史を持つ企業は、効率や生産性などの視点でITを見ていない」と鷲見氏は述べる。
鷲見研作氏
「(40人未満の)SMBの経営者が何を主張するかといえば『社員に喜んでほしい』ということ。iPadを配布すれば社員が喜ぶ、というイメージだ。しかし、そこから先を突き詰めて考えていることはあまりない」(鷲見氏)
SMBの中でも40人以上か未満かで「感覚が異なる」という鷲見氏。この規模の前後で「IT管理」を意識し始めるのが理由だとする。
「IT管理はユーザー管理に通じる。どう管理していくかという発想が生まれるのだ。専任か兼任かは別として、この規模の前後でIT担当者が置かれるようになる。導入面では、IT担当を置く前は身近にある製品やサービスを候補に挙げる傾向が強く、担当が置かれると比較検討を始めるようになる。ITの曖昧だった部分を明確にしようとするのが40人程度の規模なのだろう」(鷲見氏)
さっさと帰るために効率化しよう
ITによる効率化と生産性の向上を目指さない——それは人手で問題を解決しようとする姿だ。鷲見氏は「メールボックスが小さいため、週に1回、経営者自身がアーカイブを取っているという話も聞く」という。
「SMBの経営者にはよく『肩こり』の比喩で話をする。肩こりは、揉まれて初めて気づくもの。週に一回メールのアーカイブを取っている経営者は、特別困った様子を見せておらず、当たり前の仕事としてこなしていた。もし、クラウドに25GBのメールボックスがあれば数年はもつのだが…」(鷲見氏)
経営者や従業員が本来の仕事に集中するために、そして「さっさと帰るために(笑)」(鷲見氏)、SMBにはITによる効率化の余地がまだまだ残っていそうだ。