マイクロソフトがハードウェア部門を設置したのは1982年。いまから30年前のことである。同部門では1983年に「Microsoft Mouse」を発売。現在もマウス、キーボード、ウェブカメラを発売している。
そして、ゲーム専用機の「Xbox 360」や、それと連動する「Kinect」もマイクロソフトが提供するハードウェアである。Xbox 360は、2011年12月時点での全世界における累計出荷台数が6600万台以上に達し、全世界で最も売れているゲームコンソールとなっている。
だが、これらの製品は、今回のタブレット端末とは意味合いが異なる。
マウスをはじめとする周辺機器群の場合には、PCをより使いやすくするための環境を実現することが目的であり、付加価値商品ばかりを提供してきたことからもそれはわかる。また、Xbox 360では、プラットフォームがハードウェアおよびソフトウェアと一体になっていることが一般的であり、そこからエコシステムか生まれるという環境からすれば理解できるものといえる。
ところが、今回のタブレット端末にそれらの理由は当てはまらない。これまでのマイクロソフトにはない発想となる。
この発表があった直後、日本マイクロソフト社内でも混乱が走った。
「この製品は日本で発売されるのか」
社内ではこの時点から情報収集をはじめたほどだった。
現時点では、米国での発表ということに留めており、日本法人からはなんら情報は発表されていない。
だが、日本ですぐにマイクロソフトブランドのタブレット端末が発売されるかどうかは未知数だ。実際、マイクロソフトが発表したプレスリリースでは、「米国内の一部のMicrosoft Storeと、オンラインのMicrosoft Storeで販売予定」としており、まずは米国内での販売に限定していることが読み取れる。
日本にはWindowsの特徴を最大限に生かすことができるPCメーカーが数多く存在し、マイクロソフトブランドのタブレット端末を直接販売することに対する影響が大きい。

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また、タブレット端末が扱われることになる直営店舗のMicrosoft Storeは、将来的には日本への出店が実現する可能性までは示唆するものの、日本固有の販売パートナーとの関係があり、直販体制を確立しにくいのも事実だ。
米国の店舗の場合は、説明型の販売形態が確立されていないため、Microsoft Storeのような直営店舗が必要となる。しかし、日本では量販店に専門知識を持った店員が常駐しており、説明型の販売形態が確立している。直営店出店の必要性が低いとの判断も働いているともいう。つまり、自社ブランドのタブレット端末を市場投入しても、量販店ルートでの販売を模索しない限り、販売ルートの確保もオンラインだけということになる可能性が高いのだ。
マイクロソフトはこれまでも「いい意味」で日本市場を対象外としてきた経緯があった。とくに試験的な意味合いを持った製品や施策の場合に目立つ。Microsoft Storeもそうであり、携帯音楽ブレーヤーのZune、初期のWindows Phoneもそうだった。
このタブレット端末も同様の位置づけになる可能性は捨てきれないだろう。
しかし、自社ブランドでの展開、直販限定、そしてソフトウェア販売のマーケットプレイス展開と、アップルの戦略を踏襲する動きが目立ちすぎる。エコシステムという最大の差別化策への影響が避けられないことをわかっていながらも、ここまで踏み込むマイクロソフトは、あまりにも焦りすぎではないだろうか。
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