解説

デジタル家電業界のトヨタ

三国大洋 2012年06月21日 16時37分

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 米国にビジオ(Vizio)というテレビメーカーがある。

 国内電機メーカー大手の牙城である日本では、さすがに店頭で商品を目にする機会がほとんどないだろう。しかし、「名前くらいは聞いたことがある」という方も少なくないかもしれない。

 そのビジオが先週、同社としてはじめてのパソコンを発表した。アップルの新型MacBook Pro(Retina Display)の発表と、マイクロソフトが予告した「謎の製品発表」にはさまれたせいか、一部のメディアでしか採り上げられなかったが、なかなか興味を惹く記事を目にしたので、今回はビジオについて少し書いてみたい。

 主な参照元はThe Vergeに載った特集記事。おそらく、ビジオ側からの働きかけがあって取材したと思われる「開発者・担当者インタビュー」だ(註1)。

米液晶テレビ市場で第2位のテレビメーカー

 ビジオは2002年の創業で、ハードウェアメーカー(OEM)としてはかなり若い企業だ。しかし、アイサプライの資料(IHS iSuppli)によると、2011年Q4の米液晶テレビ市場シェアではサムスン電子に次ぐ第2位となっている(註2)。ちなみに、さらに1年前の2010年Q4には、いちはやくLEDバックライトをつかった薄型液晶テレビに力を入れたのが奏功し、サムスン電子を抜いて首位に躍り出ていた。

 ところが、このアドバンテージがなくなってしまい、2011年Q4には出荷台数が前年同期比44%減となった(それでも160万台強を出荷し、15.4%のシェアを獲得している)。さらに今年は米韓の自由貿易協定(FTA)締結の影響で、「ビジオにはますます不利になりそう」というアナリストのコメントもみられる(註3)。

 また、世界シェア首位のサムスン電子でさえも経営的に苦戦を強いられてきたテレビ市場のことを思うと、たとえナンバー2であっても、大手各社を相手に戦うビジオが決して楽な状況にあるとは思えない。そうしたことからも、携帯端末などに比べてより成熟したパソコン市場への参入は、ビジオにとってかなり戦略的に重要な一手であることが推測できると思う。

 ところで。

 ふだんはアップル製品、そしてテレビ周りはソニー製品しか使っていないような私が、このすぐに買えもしないビジオのパソコンに目をとめ、The Vergeの長い記事に目を通したのには、理由があった。それは何をさておき製品——とくに一体型デスクトップのデザインにあった。

 「百聞は一見に如かず」で、まずは紹介の動画と製品の写真をご覧いただきたい。

[CNET.comによるレビュー]

 CNET.comやThe Vergeの記事では、「そもそもビジオが米国のブランドだったなんて知らなかった」「アップルのデザイン路線をちゃっかり踏襲したのでは……」というような読者の書き込みがみられて面白いのだが、ここではそうした消費者(ユーザー)目線の話には触れない。ボーナス一回分をまるごとはたいて「Macintosh LC II」を買ったことをいまだに記憶している者には、「これだけ高スペックで、洒落たデザインのパソコンが、900ドル以下で手に入る」という事実だけでも、ある種の驚異であったりする。

 しかし、直近のWindowsマシンの性能やコストパフォーマンスのレベルからみて、Vizioのパソコンがどこまですごいのか、あるいは手頃な製品なのかは、正直よくわからない。さらに、デザインについては当然主観的な好き嫌いが入ってくる。ましてや実物の質感が確かめられていないモノについては、尚更と思えるためである(写真では結構洒落て見えたのに、実物があまりにプラスチックな質感でがっかり……といったガジェットはいまだによくあると思う)。

 それでも仕事柄、長い時間をモニターの前で過ごす身としては、つい「ふたつあるHDMI端子の片方にMac miniをつなぎ、もうひとつにBlu-rayレコーダーをつないで……それだとApple TVが指せないか」などと想像をかき立てられてしまう製品という印象は受けるのだ。(次ページ「テレビという成熟市場で強さを発揮できる理由」)

註1:The Vergeに掲載されたVizioの担当社インタビュー

Vizio reboots the PC: a quiet American success story takes on sleeping giants



註3:米韓FTAでビジオには不利な状況に?

"The recent Free Trade Agreement between the United States and South Korea will remove tariffs imposed on Korean firms selling TVs in America," Morrod said. "Because of this accord, Samsung and fellow South Korean brand LG Electronics are poised to increase their shipments in the United States this year."

Samsung Widens Lead in US LCD-TV Shipment with Record-High Market Share in Q4

ZDNet Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

この記事を読んだ方に

関連ホワイトペーパー

連載

CIO
インシデントをもたらすヒューマンエラー
トランザクションの今昔物語
エリック松永のデジタルIQ道場
研究現場から見たAI
Fintechの正体
米ZDNet編集長Larryの独り言
大木豊成「仕事で使うアップルのトリセツ」
山本雅史「ハードから読み解くITトレンド放談」
田中克己「2020年のIT企業」
松岡功「一言もの申す」
松岡功「今週の明言」
内山悟志「IT部門はどこに向かうのか」
林 雅之「デジタル未来からの手紙」
谷川耕一「エンプラITならこれは知っとけ」
大河原克行「エンプラ徒然」
内製化とユーザー体験の関係
「プロジェクトマネジメント」の解き方
ITは「ひみつ道具」の夢を見る
セキュリティ
「企業セキュリティの歩き方」
「サイバーセキュリティ未来考」
「ネットワークセキュリティの要諦」
「セキュリティの論点」
スペシャル
ざっくりわかるSNSマーケティング入門
課題解決のためのUI/UX
誰もが開発者になる時代 ~業務システム開発の現場を行く~
「Windows 10」法人導入の手引き
ソフトウェア開発パラダイムの進化
エンタープライズトレンド
10の事情
座談会@ZDNet
Dr.津田のクラウドトップガン対談
Gartner Symposium
IBM World of Watson
de:code
Sapphire Now
VMworld
Microsoft WPC
Microsoft Connect()
HPE Discover
Oracle OpenWorld
Dell EMC World
AWS re:Invent
AWS Summit
PTC LiveWorx
より賢く活用するためのOSS最新動向
古賀政純「Dockerがもたらすビジネス変革」
中国ビジネス四方山話
ベトナムでビジネス
米株式動向
日本株展望
企業決算