日立製作所は7月4日、サイズやレイアウトを柔軟に設計可能で、短期間に低コストで構築できる屋外設置式のコンテナ型データセンター「フレキシブルデザインコンテナ」を7月6日から販売することを発表した。従来から提供している「モジュール型データセンタ」のラインアップに追加する。
フレキシブルデザインコンテナは、屋外に設置したコンテナ内にサーバやストレージなどのIT機器を搭載したラック、冷却用の空調機器などのIT設備を、稼働効率が最大になるように配置する。無人運転を支援する監視システムとともに提供する。
通常のコンテナ型データセンターは、コンテナのままで輸送できるというメリットがある。だが、コンテナのサイズに制約があるために、保守スペースの確保やIT機器の高集積化、冷却効率の最適化が課題になると日立は指摘している。
フレキシブルデザインコンテナは、システムの規模や構成に応じてコンテナのサイズを柔軟に決められることから、設備の稼働効率を高めつつ、十分な保守スペースを確保するなどユーザー企業のニーズに対応したデータセンターを短期間で構築できるとメリットを強調している。
コンテナ内に間仕切りを設置し、マシン設置エリアと隔離した前室を装備できる。前室から屋外に通じるコンテナの外扉とマシン設置エリアへの内扉の2段階で施錠することで、セキュリティを向上させている。保守点検時の入退室によるドア開閉時にもマシン設置エリアの温湿度を維持できるほか、雨風やホコリなどの進入も防止できるとメリットを説明する。
販売開始に先立ち、独立行政法人の情報通信研究機構(NICT)がフレキシブルデザインコンテナを採用している。NICTは、研究開発用クラウドサービスのグローバル提供に向けてフレキシブルデザインコンテナを導入している。約2.5カ月で構築して、4月から順次稼働している。
同データセンターは、幅約20m×奥行き約6.5mの床面積130平方メートル、高さ3.9m。監視システムを整備することで、無人運転できる。
冷却は、発熱するIT機器の直近に空調機器を設置する「局所空冷」方式を採用している。局所空冷は、水冷と比べて耐久性が高く、整備コストが低いというメリットがある。
屋外に設置するデータセンターの冷却方式としては、外気を取り込んで室内の冷却に利用する「外気冷却」方式がある。今回は、設置場所の気温や湿度などの環境条件から、気密性の高い局所空冷方式を採用した。今回のデータセンターの電力使用効率(Power Usage Effectiveness:PUE)は1.25となっている。設置する場所の条件に応じて、局所空冷と外気冷却などを選択できる仕組みとなっている。
NICTに導入されたフレキシブルデザインコンテナは、科学データを蓄積するための「ストレージ重点型システム」、新世代通信網テストベッド上の仮想マシンからなるサービスの開発環境などを中小企業に提供する「IaaS型クラウドサービスシステム」、自動音声翻訳などのユニバーサルコミュニケーション技術を研究開発するための「SaaS型クラウドサービスシステム」の基盤を兼ね備えている。
国土交通省は2011年3月に、稼働時に無人になるコンテナ型データセンターについて、建築基準法上の建築物に該当しないという通達を出している。以降、日本国内でもコンテナ型データセンターを展開するケースが相次いでいる。