シトリックス・システムズ・ジャパンが開催するイベント「Citrix iForum 2012 Japan」は7月18日、2日目を迎えた。2日目の基調講演はクラウドに焦点を当てている。
米Citrix Systemsのクラウドプラットフォームグループのグループバイスプレジデント兼ゼネラルマネージャーを務めるSameer Dholakia氏をはじめ複数のスピーカーが登壇し、「クラウドではないものとはどんなものか?」と逆説的なアプローチからクラウドの本質に迫った。
Dholakia氏は「クラウドはITサービスを抜本的に変革させるもの。昔、メインフレームからクライアント/サーバ(C/S)に移行したような劇的変化を与えるもの」だと最初に説明。一口にクラウドといっても色々な種類があるが、「オンデマンドであること、必要な時にいつでもアクセスできること、弾力性があること、従量課金制であること、マルチテナントであることなど共通の特徴を持っている」と説明した。
その一方でDholakia氏は「サーバ仮想化とクラウドの違いはどこにあるのか? その違いははっきりしない。サーバの仮想化がクラウドであるかのように言われることもあるが、“サーバ仮想化=プライベートクラウド”ではない。クラウドの本質とはどこにあるのかは、何がクラウドではないのか? と考えていくことが正しいアプローチになるのではないか」とクラウドの本質を理解するために、クラウドではないものとはどんなものかを挙げていった。
Dholakia氏は「Google=クラウド」というスライドを見せ、「これに反論する人はいないだろう。しかし、Googleは次世代サーバ仮想化を実現しているのか? といえばそうではない。FacebookもSalesforceもAmazon Web Service(AWS)も同じ。AWSはハイパーバイザを使ってはいるが、管理機能を使っているわけではない」と、次世代仮想化を実現しているか否かがクラウドの本質ではないと示唆した。
逆にクラウドに欠かせないものとしてオーケストレーションを挙げ、「新しいオペレーションの胆。オーケストレーションソフトウェアが中心となって、Amazonスタイルのクラウドが生まれる」と説明した。
Amazonの場合、30億ドル相当のビジネスをしていた時代と現在を比較すると「昨年増強したサーバは30億ドルビジネスの時代と同等」と急速にサーバを増強していると指摘。簡単にサーバ増強が実現できる要因となっているのがクラウドで、「ITサービスの提供方法が抜本的に変わって来ている」とDholakia氏は指摘した。
その根本となるオーケストレーションソフトウェアとしてCitrixはクラウド環境を管理するためのミドルウェア「CloudStack」を提供しており、「これを利用することでAmazonライクなクラウド構築が実現できる」と説明。同じくクラウド環境を管理するためのソフトウェア「Citrix CloudPortal」とともに利用することで、クラウド環境が構築できると話した。
次の「クラウドではない」ものの特徴的な例として、Dholakia氏は「クラウドはトップダウンではない」ことを挙げた。
「企業の情報システム部門では、通常はCIO(最高情報責任者)のような立場の人が特定のテクノロジを選択していく。しかし、それに対してクラウドはボトムアップ型で、草の根的なアプローチからスタートしている」(Dholakia氏)
これを実証するゲストスピーカーとして「Publickey」を主宰する新野淳一氏が登壇している。新野氏は「コミュニティの重要性が高まり、コミュニティ発の情報が、ベンダー発の情報を質、量ともに大きく凌駕している」と話した。