ソニー社長に平井一夫氏が就任して、約9カ月が経過した。社長就任以来「One SONY」の方針を掲げ、社内の改革に挑んできた成果が徐々に表面化しようとしている。今、ソニーはどんな風に変化を遂げようとしているのか。
米ラスベガスで開催した「2013 International CES」において、平井社長がグループインタビューに応じた。各界のエグゼクティブに価値創造のヒントを聞く連載「ZDNet Japan トップインタビュー」。今回はソニーの平井社長に聞いた。
一体感の醸成に努力
――社長就任以来、ソニーは何が変わってきたのでしょうか。
社長就任時に「One SONY」ということを打ち出しました。トップマネジメントは、人事担当とCFO(最高財務責任者)以外はトップを入れ替え、主要市場におけるトップも北米以外はすべて変更し、私と同じ夢を持ち、会社が進んでいく方向や夢を実現する方法を共有できる人たちと仕事をすることを目指してきました。
毎週、事業部長を集めて議論している中で変化してきたのは、自分が担当する事業部をどうするかではなく、ソニー全体にどう貢献するのかという視点を持てるようになってきた点です。これは大きな変化です。
平井一夫氏
ソニー全体では16万人の社員がいます。9カ月では、この意識が社員全体には浸透したとは言えないが、One SONYとしてトップマネジメントが同じ方向に進んでいるでいることを、16万人の社員が理解し始めているのではないかと思っています。
また、私は自分の言葉で「ソニーは危機的状況にある」ということを伝えてきました。何をして、どういう形で復活させていくのかということを、海外の販売会社や工場に赴いて、自分の言葉でしゃべり、社員からも質問を受けて、いかに一体感を作っていくかということに努力してきました。この手応えは感じています。
社員に向けて言っているのは「いかにしてソニーは、お客様の好奇心を刺激して感動をもたらす会社になっていくかということを念頭において、そこから商品やコンテンツ、サービスを考えていく会社であり続けたい」ということです。お客様に感動を与えるというメッセージのエッセンスをどう表現するかという観点から「BE MOVED」という言葉を掲げ、これからさまざまな場面で使っていこうと考えています。
――社長就任以来、“ソニーらしい”商品の創出を掲げています。それは出てきていますか。
2013 International CESでは、56型の4K有機ELテレビを展示しました。ソニーのDNAは、音と画質にこだわってきたという点にあります。その意味でも、今回の有機ELテレビは、ひとつの集大成だといえるでしょう。これはソニーらしい、ソニーのDNAが詰まった製品だといえます。
有機ELテレビは、ソニーが2007年に世界初の11型の有機ELテレビを商品化してから、業界をリードしてきた分野です。今年、56型4K有機ELテレビを見せることができたのは、大変うれしく思っています。
一方で、違う観点でもソニーらしさが発揮されています。その一例が、スマートフォン。これまでのエリクソンとのジョイントベンチャー時代には、デジタルカメラを作っている事業部からすれば、なぜソニーの技術を合弁会社に出さなくてはいけないのか、という声があり、明らかに壁が存在していた。