大河原克行のエンプラ徒然

勝敗のモノサシを変え始めた日本企業

大河原克行 2012年12月05日 12時00分

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握手する三菱重工業の大宮英明社長と日立製作所の中西宏明社長
握手する三菱重工業の大宮英明社長と日立製作所の中西宏明社長

 11月29日に発表された三菱重工と日立製作所の火力発電システム分野での事業統合は、世界で戦う日本企業が選択した道筋のひとつだといえる。

 両社の発表によると、火力発電システムを主体とする分野で両社の事業を統合し、共同で運営することに基本合意。2014年1月1日を目途に、三菱重工業が65%、日立製作所が35%を出資する合弁会社に火力発電システムを主体とする事業をそれぞれ集約する。

 統合のために共同で統合準備委員会を組織し、統合の実現に必要な作業や申請などを進めていくという。

 両社には、製鉄機械分野における提携やその後の合弁会社の設立、海外向け都市交通システム事業での協業、水力発電システム事業の統合に加え、福島第一原発への共同支援などを進めてきた経緯がある。

 三菱重工業の大宮英明社長は「十数年に渡って成功裏に共同に事業を推進し、信頼関係も堅固である」と語り、「両社が長年に渡って築き上げてきた世界最高水準の技術とブランドである火力発電事業を統合することで、世界をリードする会社になる」と意気込む。

 また、日立製作所の中西宏明社長は「火力発電事業において、三菱重工は恐るべき競合相手であったが、市場で勝ち抜いていくパートナーとして考えると、これほど心強いパートナーはない。ガスタービンでは大型は三菱重工が得意な分野であり、中小型は日立が得意。地域でも欧州やアフリカは日立が強く、三菱重工は東南アジアや中東、その他で基盤を持つ。製品面でもグローバルネットワークでも、補完的な関係がある。日立が持つIT基盤を組み合わせることで、1+1を3にも4にもする世界最高レベルの協力関係になる」とする。

 世界で戦うための統合であることは、両社社長のコメントからも明らかである。

 大宮社長は、「エネルギー環境事業のコアである火力発電事業は、市場規模が大きく、欧米メーカーに加え中国やインドなどの新興国企業との競争がますます激しくなる。国家を代表する企業として、グローバル競争を勝ち抜くために必要な事業戦略について両社が同じような認識を持っていたこと、技術や製品の相乗効果と補完効果が見込まれることから合意した。エネルギーや、環境ビジネスと隣接するスマートコミュニティ市場にも特性を生かしたい」とする。

 また、中西社長は「製品ラインアップやグローバルネットワークのほか、ボイラーから発電機、脱硫脱硝技術などのAQCS(排ガス浄化システム)を含み、トータルソリューションを提供する技術と人材をグローバルに生かす日本最強の組み合わせである。新会社はグローバルの火力発電システム市場において、海外のメジャープレイヤーに打ち勝つことでリーディングポジションを獲得し、世界各国で求められている電力の安定化をサポートする存在になる。コアになる製品を一流のものに仕立て上げ、それを活用していく決断が合意の背景にある。グローバル市場において、競合すべき相手は国内他社ではなく、海外のメジャープレイヤー、中国やインド、韓国のプレイヤーだ。そこに打ち勝たなくてはならない」と語る。

 世界で生き残るために、日本に本社を持つグローバルカンパニーは大きな転換を迫られている。

合従連衡

 今回の三菱重工と日立製作所のような日本勢による事業統合は、ソニー、東芝、日立製作所による中小型液晶ディスプレイのジャパンディスプレイや、三菱電機、日立製作所、NECを母体とし、経営再建に苦しんでいるルネサステクノロジーなどの例がある。IT産業以外では、新日本製鉄と住友金属工業の合併の動きがあったばかりだ。

 一方、海外企業との合弁によって事業成長に取り組んだ例では、中国レノボグループとNECパーソナルコンピュータによるPC事業があるほか、シャープの大型液晶生産拠点に台湾鴻海グループが出資するといった動きもある。また、今週に入ってからシャープがクアルコムと資本提携を結んだというニュースも話題になった。

 こうした合弁の動きだけでなく、グローバルで戦うための体質転換は、いまや多くの企業に共通したものだ。

 日本のグローバル企業の多くは長引く円高の影響もあり、海外で事業を行うには厳しい状況を余儀なくされてきた。さらに、デジタル化の影響、普及戦略を軸とする新興国企業の台頭などにより、それに追随できない日本の企業は世界市場での競争力を失いはじめてもいた。優れた技術や付加価値の高い製品、開拓した販売網やサービス網を持っていても、それを生かし切れず、さらに普及価格を求めるユーザーニーズに対しては提案が後手に回るという状況を繰り返してきたからだ。

 そして、日本を中心としたビジネスモデルから脱しきれず、内弁慶となっていた企業体質も大きな課題だったといえる。限られた市場規模のなかに、これだけ多くの大手企業がひしめくなかで、各社が存続できる環境は世界でも異例だ。

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