アイ・ティ・アール(ITR)が2012年7月に発表したレポート「クラウド/ICTアウトソーシング動向調査2012」は、非常に興味深い結果を伝えている。
国内企業の情報システム部門と経営企画部門を対象にした調査で、クラウド活用の意向を伝える内容だ。調査によると「クラウドサービスを積極的に活用していくべきだと考えている」とした回答者は77.8%に上った。
興味深いのは、基幹系アプリケーションのクラウド化に触れた部分。ITRでは「現在は6割から7割が非クラウド型で構築されている基幹系アプリケーションについても、今後の計画ではクラウド型での構築を希望する企業が軒並み半数を超えています」と伝えた。
さらに「プライベートクラウド+運用アウトソース」の組み合わせを望む企業が増加しているともある。ITRではこの動きを「システム構築での独自性と自在性は確保しつつも、運用業務を効率化したいとのニーズが高まっていることがうかがえます」と分析している。
基幹系システムのクラウド化を、企業ユーザーはどのように捉えているのだろうか。また、クラウドサービス事業者は、この動きにどう対応しようとしているのだろうか。
本特集「基幹系システムのクラウド化を考える」では、伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)、インターネットイニシアティブ(IIJ)、新日鉄住金ソリューションズ(NSSOL)の3社の担当者に、基幹システムのクラウド化に関する顧客動向、自社が提供するサービス、そしてスペックだけでは表現できない強みを聞いた。
インタビューは第2回以降に掲載していくが、今回は特集のサマリーを紹介しておきたい。
まず、2007年からクラウドサービス「absonne」を提供するNSSOLは、サービス開始当初から基幹系システムのクラウド化をターゲットにしてきた。2012年6月には基幹系システムのクラウド化に関する構築と運用ノウハウを「ミッションクリティカル・クラウド」として標準化し、absonneを大幅に強化してもいる。
CTCは「TechnoCUVIC」で、大手製造業における基幹系システムのクラウド化の事例を持つ。M&A(買収合併)によって2社のシステムを統合することになった企業のケースだ。オンプレミスでシステムを統合すると非常に時間がかかると判断した両社は、クラウド化で共用利用するという方法を採用。システム統合の時間を圧倒的に短縮したという。
IIJのサービス「IIJ GIOコンポーネントサービス」の担当者は、ユーザーの動向について生々しい話を聞かせてくれた。ユーザーが基幹系システムのクラウド化に躊躇する理由は、セキュリティやサービスの継続性だけでなく「(IT部門の)仕事が無くなると判断するところもある」からだ。「特に大企業でグループに情報システム子会社を持っているところで顕著だ。本体は子会社にITアウトソーシングをしているので、スリム化できていると言えよう。しかし、情報システム子会社自身がそれをやり過ぎると、どうなってしまうのか、という不安がある」という。
このように、ユーザーのリアルな現状、具体的な事例(ケース)、そしてサービスの内容まで含め、本特集では「基幹系システムのクラウド化」の現状を幅広く紹介していく。
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