以下はYahooの元最高経営責任者(CEO)であるCarol Bartz氏が2009年に述べた言葉だ。
的確性というものは、ユーザーが最も気にしている人物や事物に起こっていることに対してわれわれが用意している秘密の調味料だ。つまり、Yahoo!上に表示させる内容をユーザーがパーソナライズできるようにするか(最近はこれに多大な労力を費やしたいと思う人はいないだろうが)、Yahooの知識を活用してユーザーの関心事に合うことを表示させるか、ということだ。
そして、以下はSearch Engine RoundtableのBarry Schwartz氏が、2005年に行われたJerry Yang氏の基調講演について語った際のものだ。
Jerry Yang氏は、どのような検索においても検索の的確性が主要な要素であると述べた。また同氏は、もはやPageRankやLink Dataといったアルゴリズムだけの問題ではないとも述べた。つまり、検索の的確性は今やパーソナライゼーションについての問題であり、嗜好に基づいた検索と密接につながっているのだ。これによって途方もない価値が付加される。「My Yahoo!」はその1つだが、今後さらに多くのものが出てくるはずだ。
では、パーソナライゼーションとはいったい何なのだろうか?Yahooにとって新しいものではないし、当然ながら新しいビジネスコンセプトというわけでもない。近所の店のおじさんから名前で呼びかけられると親しみを感じ、行きつけのスターバックスの店員からドリンクカップに書く名前を尋ねられる(それも毎週)といらだちを覚えるのには理由があるはずだ。
パーソナライゼーションは当初、Yahooが他社よりも優れた、そして差別化された(検索)製品を提供する手段だった。これは後に、引き寄せた顧客すべてを確保する手段ともなった。しかしそこに至るまでの間、パーソナライゼーションは、言葉は悪いもののコンシューマー製品のごちゃごちゃしたポートフォリオによる混乱から企業を守るための手段として無造作に扱われていた。
パーソナライゼーションはYahooにとって、昔と同様に今も、業務を続けていくうえで必要不可欠なものとなっている。最新の決算報告(2012会計年度全体の総括)によると、Yahooの売上高のうち約43%がディスプレイ広告によるものであり、約38%が検索によるものとなっている。つまり、(1)特定の人々に的を絞りたい企業と、(2)検索ディレクトリを用いて適切なリソースを見つけたいと考えている人々から収益を得ようとした場合、「パーソナライゼーション」は両者を結び付ける極めて本質的な要素となる。パーソナライゼーションは、言わば全国展開する運送会社にとっての道路や橋に相当するものなのだ。
つまり、Mayer氏が今やろうとしているのは、顧客を追いかけることなのである。ここ数年、Yahooに負の影響を与えている2つの大きなトレンドがある。その1つはモバイルコンピューティングに向けた着実な流れだ。これによって収益構造(および製品開発)という観点から見た展望の悪化や、推進力の低下を招いている。そしてもう1つは大衆のインターネット使用形態が大きく様変わりしているという流れだ。インターネットに匿名でアクセスすることが当たり前だった時代には、さまざまな検索を行って必要な情報を得るのが一般的だった。しかし現在では、あらゆるユーザーが、最初から適切な情報を得られるよう個人情報を自らのユーザープロフィールとして明らかにしている。