成長戦略から体質強化に転換--新中計に見る碓井エプソン社長の真意

大河原克行 2013年05月09日 15時27分

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 2014年度を最終年度とした「SE15後期 中期経営計画」では成長戦略を描いていたセイコーエプソン。だが、その初年度となる2012年度に、2度にわたる業績の下方修正を余儀なくされるなど、厳しい経営環境に陥った。

 先頃発表した2012年度(2012年4月~2013年3月)連結業績は、売上高が前年度比3.0%減の8512億円、営業利益が同13.7%減の212億円、経常利益が同34.8%減の176億円、当期純利益は100億円の赤字と減収減益、そして最終赤字の結果となった。

 同社では3月に、新たに2015年度を最終年度とする「SE15後期 新中期経営計画」を策定。「売上高成長を過度に追わず、着実に利益を生み出すマネジメントの推進」を基本方針に掲げるなど、体質強化へと事業戦略の舵を大きく切った。なぜ、成長戦略から体質強化へと転換したのか。セイコーエプソン代表取締役社長の碓井稔氏にその狙いを聞いた。

コンシューマーとビジネスの両輪を回す

――3月13日に発表した新中期経営計画では、これまでの成長路線から大きく舵を切る内容となっていますね。

碓井 今回策定した2015年度最終年度とする、SE15後期 新中期経営計画は、2016年度から始まる次期中期経営計画に向けた“基礎を築く3年間”と位置付けています。

 2016年度からの次期中期経営計画では、コンシューマー向けの画像・映像出力機器中心の企業から、プロフェッショナル向けを含む新しい情報ツールや設備をクリエイトし、再び力強く成長する企業へと脱皮することを目指します。つまり、次の成長戦略に向けて、この3年間は基礎体力作りに取り組むというのが、新たな中期経営計画の狙いとなります。

 2012年度までの中期経営計画は、大幅な成長を軸としたものでした。これを見直した最大の理由は、もっとビジネス向けの事業体質を強化する必要があり、そのための時間が必要だと考えたからです。

 組織を外から見ると、コンシューマーとビジネスの両輪を持ち、開発や販売体制ができているように見える。だが、成長戦略を実行した途端に、コンシューマーに偏った形になってしまう体質がエプソンにあります。それを是正しなくてはならない。

――それはどんな点で見られていますか。


碓井 インクジェットプリンタ事業に象徴されるように、エプソンにとって、コンシューマー領域は得意分野です。どうやったら事業を成長させることができるのか、ということも熟知しています。また、短期的に業績をあげられるコンシューマー領域のビジネススタイルが社内体質として浸透している。

 この体質のまま成長戦略を実行すると、両輪がバランスよく成長せずに、売り上げが中長期になるオフィス向けと産業向けビジネスを後回しにして、得意なコンシューマー領域で埋めようという力が大きく加わる。その結果、売り上げはあがるが、薄利多売の方向に走ることになり、収益性の悪化につながるのです。

 エプソンは、これまでにもビジネス領域の事業拡大に取り組んできた経緯がありますが、なかなかうまく行かなかったのは、口で言ったり、頭では理解していても、体質そのものを変えることができていなかったことに尽きます。もし、今の体質のままで成長戦略を実行し、全速力で走れ、といったら、エプソンは確実にコケる。

 全速力で走ることができる基礎体力をつけるために、いまは売り上げ拡大を過度に追わなくていいから、形を変えることを優先しよう、というのが、この3年間の取り組みだというわけです。

――具体的にはどんな体質へと転換するのですか。

碓井 エプソンを「モノ」から「コト」を売る会社に変えていきます。社員のスキル、マインドを変え、パフォーマンスを発揮できる企業へと転換していかなくてはならない。

 「エプソンが変わったな」という様子が外から見えるのは後でもいいんです。まずは、社員がそういう気持ちになることが大切であり、内側に変化が見えればいい。2016年度からは全力疾走することを社内外に向けて宣言したわけですから、その基礎体力作りに向けて、徹底的に鍛えていくつもりです。

――2013年度から「プリンタ事業」のセグメントを「プリンティングシステム事業」に変更しますね。

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