本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉をいくつか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、国立情報学研究所の喜連川優 所長と、日本HPの杉原博茂 常務執行役員の発言を紹介する。
「ICT分野では今、アイデアドリブンな新サービスが従来にない技術の創出を牽引するという流れができつつある」
(国立情報学研究所 喜連川優 所長)
国立情報学研究所の喜連川優 所長
国立情報学研究所(NII)が4月18日に開いた記者会見で、この4月からNIIの新所長に就任した喜連川氏が所信と今後の活動について語った。同氏の冒頭の発言は、その会見でICT分野の新しい潮流について述べたものである。
喜連川氏は、1978年に東京大学工学部電子工学科を卒業し、83年に同大学院工学系研究科情報工学専攻博士課程を修了(工学博士)。同年、東京大学生産技術研究所に入所し、2003年、同所戦略情報融合国際研究センターのセンター長に就任し、現在も同職を務めている。
同氏の専門分野は大規模データ処理で、これまで文部科学省の「情報爆発」プロジェクト代表や経済産業省の「情報大航海」プロジェクト戦略会議委員長を務めてきた。2009年にはデータベース分野で最も権威のあるACM E.F.Codd賞を受賞。2010年から東京大学地球観測データ統融合連携研究機構長も務めている。
まさに今、ICTで最も注目されているビッグデータ活用における研究分野の第一人者である。今回のNII所長就任にあたって、同氏は次のような所信を述べた。
「NIIの使命は、わが国唯一の情報学の学術総合研究所として、情報学という学術分野において長期的な視点に立つ基礎研究並びに社会課題の解決を目指した実践的な研究を推進することにある。同時に、大学共同利用機関として大学や研究所を結ぶネットワークの運用、 学術コンテンツ並びにサービスプラットフォームの提供などの事業を展開・発展させること、そしてこれらの活動を通して人材育成と社会・国際貢献に務めることも極めて重要な使命だと考えている」
同氏はさらに「世界的にも情報学の研究とITサービス・ネットワーク運用を同時に行っている機関は稀有だ」とし、「猛烈な勢いで進化する情報学において、実際にシステムを運用することを通じてさまざまなペイン(苦痛)を自ら体感することは、ICTの流れを肌で感じ今後の研究開発の方向を把握する最も的確な手段であると同時に、最先端の情報サービスを大学と共創することに大きく資すると確信している」とNIIの活動の意義を語った。