--Haswellはデータセンター内のサーバでも使えるの?
サーバをターゲットにしているHaswellプロセッサファミリは今のところ「Intel Xeon E3-1200 v3」というシリーズのものだけだね。
「Intel Xeon E3-1200」シリーズは元々、Intelの「Xeon」プロセッサのうち、消費電力が最も小さいとうたわれていたものであり、熱設計電力が13Wで1.1GHz駆動のHaswellプロセッサ「Intel Xeon E3-1220L v3」はマイクロサーバや通信インフラでの使用を想定して設計されているんだ。
このプロセッサファミリに統合されているグラフィックスの性能は、動画をさまざまなフォーマットで各種のデバイスに送り届けるということを念頭に置いて設計されている。このチップに統合されているIntel HD Graphics 4600/4700というグラフィックスコアにはAVC(H.264)メディアのトランスコード、およびMVC(Blu-ray 3D)やMPEG-2のハードウェアエンコード、JPEGやMPEGのハードウェアエンコードといったハードウェアアクセラレータ機能が搭載されているんだ。Intelが行ったトランスコード性能のテストでは、65WのHaswell E3をベースにしたサーバの方が、NVIDIAの「GeForce GTX 680」カードを搭載した290Wのサーバよりも25%優れた成績を残したんだってさ。
E3ファミリのプロセッサは、上は熱設計電力が84Wで3.6GHz駆動のクアッドコアプロセッサである「Intel Xeon E3-1285 v3」から、13Wで1.1GHz駆動のデュアルコアプロセッサであるIntel Xeon E3-1220L v3まで取りそろえられているんだ。
Intelは一般的な効率とパフォーマンスでも従来のE3プロセッサを上回っていると言っているよ。Haswell世代の25WのE3プロセッサは従来の45Wプロセッサと比べると熱設計電力あたりのパフォーマンスが52%向上しているそうだ。ただし、Intel Xeon E3-1220L v3は2013年第3四半期にならないと入手できないんだ。それ以外のE3プロセッサは既に発売されているけどね。
--技術的な面では何が変わったの?
Haswellというマイクロアーキテクチャ自体はSandy Bridgeの後継にあたるもので、当初はIvy Bridge(Sandy Bridgeのダイサイズをシュリンクしたマイクロアーキテクチャ)と同じ22ナノメートルプロセスでの製造となっているんだ。
このためHaswellはSandy Bridgeとよく似ているけど、Intelはパフォーマンスと効率を向上させるためにコア内に手を入れているね。
こういった変更には、コアのバッファサイズを増やし、アウトオブオーダー実行(データと制御の流れを最適化する実装技術)の柔軟性を増すというものも含まれているんだ。また、分岐予測(正しいデータパスを予測することで、誤った分岐命令からの予測処理をやり直す必要性を低減し、パフォーマンスを向上させる技術)も改善されているよ。
また、Haswellは1クロックサイクルで実行できる内部命令の数を8にまで引き上げているよ。ちなみにSandy BridgeやIvy Bridgeだと内部命令の数は6までだったんだ。
そしてHaswellには、FMA(Fused Multiply Add)という浮動小数点演算ユニットが複数追加されているという重要な特徴がある。これによって同じマシンサイクル内で加算と乗算が可能になるため、浮動小数点演算の実行に必要となるクロックサイクル数が減るとともに、演算精度の向上も図れるんだ。
さらにHaswellのL1キャッシュとL2キャッシュのサイズはSandy BridgeやIvy Bridgeと同じだけど、利用できる帯域幅は2倍となっているんだ。
HaswellではTri-Gate(3D)トランジスタ技術が採用されていて、ベクトル浮動小数点演算のパフォーマンスを向上させるための新命令(AVX2)や、トランザクションメモリをハードウェアによってサポートすることで並列処理におけるある種の管理責任をソフトウェアからハードウェアに移す「Transactional Synchronization Extensions」(トランザクション同期拡張)、仮想化のパフォーマンス向上、拡張ページテーブル(EPT)がサポートされているんだ。なお、Haswellは2014年に開発コード名「Broadwell」という14ナノメートルのプロセスに移行する予定だそうだ。