PCは、スマートフォンやタブレットなどのポストPCデバイスにその地位を明け渡しつつある。高い処理能力や巨大なストレージが、低電力消費とクラウドストレージに取って代わられたのだ。しかし、PCは死んでしまったわけではない。この新時代への移行はPCにとってどんな意味を持っているのだろうか。
PCは死んだと言う人がいたとすれば、誇大広告に書かれている極端な主張を信じ込んでしまっているか、タイムマシンを持っていて未来から現在へ来ているのかのどちらかだろう。
提供:Lenovo
当面の間は、PCは使われ続ける。消えてしまったりはしない。今われわれが目撃しているのはPCの死ではなく、その重要性がゆっくりと、段階的に低くなっていく過程だ。しかし、PCが使われ続けるという事実は、注目が従来のシステムから新しいデバイスに移ってもPC(そしてPC業界)が今後もまったく変わらないということを意味しているわけではない。
PCからポストPCデバイスへの移行は、単にスマートフォンとタブレットがデスクトップとノートPCに取って代わるというだけの話ではない。これは、人とテクノロジーとの交わり方、あるいは結びつき方に関わる変化だ。もっとも大きな違いの1つは、ポストPCデバイスはより身近なものであり、他人と共有する可能性が低いということだろう。PCには多くのユーザーがいるかもしれないが、タブレットやスマートフォンには1人しかユーザーがいない可能性が高い。
これは、「ポストPC時代」のPCにとって何を意味するのだろうか。このデバイスは、今日のPCとどう違うのだろうか。
純粋なパワーは重要でなくなる
ムーアの法則は、ダイの上のトランジスタ密度は2年ごとに2倍になると予想しているが、このことはIntelの共同創立者であるGordon Moore氏が1965年にこの予想を発表して以来、ずっと正しかった。つまり、プロセッサの性能はこのペースで2倍になってきたということだ。この累積効果によって、今ではプロセッサとグラフィック処理ユニット(GPU)は非常に強力になっており、安価なプロセッサでも、よほど要求性能の高いタスク以外は扱えるだけのパワーを備えている。
これは、パワーと性能は重要ではなくなったということを意味する。最近では、CPUの周波数についての話を聞くことはあまりなくなった。ゲームと、動画編集やハイパフォーマンスコンピューティングなどのハイエンドアプリケーションを除けば、CPUが必要とされる場面が減っているためだ。
新しいベンチマーク指標は電力消費量
性能に対する要求は、デバイスのバッテリー寿命に対する要求に取って代わられた。ノートPCで2時間作業できればいいという時代はもう終わった。ユーザーは、丸一日使えるデバイスを求めるようになってきており、人々が欲しがっているものを実現するために、業界はハードウェアを限界まで効率化しなくてはならなくなった。
ポストPC時代のPCは、電力消費技術に関する進歩のおかげで、小さく、涼しく、静かなものになるだろう。