組織の透明力

統制から開放へ--情報システムの役割が変わる - (page 3)

斉藤徹(ループス・コミュニケーションズ)

2013-07-08 10:45

情報システムに求められる新たな役割

 創発的なコラボレーションを創りだすために、情報システム部門は今までの常識を180度変える必要がある。統制から開放へ。求められているのは「中央統制で社員に指示を出す」発想から、「社員間の交流を促進して価値を生みだす」発想へのパラダイムシフトだ。

 例えば、今までのイントラネットやグループウェアは「指示や情報の伝達」による業務効率化が目的だった。これからの企業情報基盤は「社員間の交流」による価値創造に力点が移ってゆく。そのためには社内イントラの大胆な再構築が必要だ。既存のイントラやメール、スケジューラを整理した上で、最新のテクノロジを取り入れ、社内ソーシャルネットワークを核とした新たなコラボレーションプラットフォームを構築することだ。

 情報システム部門は、今までの価値観をシフトさせないと、この転換期における抵抗勢力になってしまうだろう。守旧派としてお荷物になるか、改革派としてイノベーションを先導するか。その分岐点にあると認識すべき時ではないだろうか。今こそ、むしろテクノロジの担い手として、情報システム部門が全社改革の推進役として行動してほしい。なぜから、この改革が成功するためには、全社を支えるコラボレーションプラットフォームが中核的な役割をはたすからだ。

 このプラットフォーム構築において、情報システム部門が意識すべき視点をいくつか挙げておきたい。今までの統制志向を開放志向にギアチェンジするためには、常にこの視点をプロジェクトチーム全体で共有し、ことあるたびに原点に戻る心構えが必要だ。

情報をできる限りオープンにして、社内を透明化しよう

 もう一度、社内情報を整理することからはじめよう。社員が閲覧できる時間は限られている。必要十分な情報は何かをしっかり吟味して取捨選択すること。その上で、その情報をできるかぎり社員にオープンにする。「非公開」とする情報については、非公開にするメリットを明示すること。一般的に、部門限定の非公開情報としては「人事考課や給与データ」「製品開発計画」「顧客の個人情報」、上場企業の場合は「株価に直結する情報」などがある。

社員同志の交流を活性化し、コラボレーションを生みだそう

 社員間の交流、そこから生まれる自発的な恊働こそ、イノベーション創発のキーとなる。頑固な縦割り文化を打破するためにも、社内ソーシャルネットワークにより部門を横断した社員交流を促進すべきだ。そのためには社内コンテストや人事評価などの動機づけも大切となる。昨今のモバイル普及や通信環境を考慮し、BYOD(Bring Your Own Device、私物デバイスの活用) へも積極的に取り組むべきだろう。

社内で、お互いに感謝しあう文化を根づかせよう

 メンバー間のポジティブな相互作用とネガティブな相互作用の比率が「2.9 : 1」を下回ると組織の業務効率が落ちることが心理学の研究で発見された。組織の繁栄と衰退を分ける「ロサダライン」だ。叱りたいなら、その3倍は褒めること。感謝の言葉ほど人をやる気にさせるものはない。社内ソーシャルネットワークは「感謝の言葉」を共有し「感謝しあう文化」を醸成するために最適な空間なのだ。

社内外のソーシャル活用を連結させ、コラボレーションの輪を広げよう

 最終的には、FacebookやTwitterなどの生活者向けソーシャルネットワークと、社内ソーシャルネットワークの有機的な連携を視野に入れることをおすすめしたい。「社員の顔」は社外向け広報のキラーコンテンツとなるし、「顧客の声」は製品サービス改善の基礎となる貴重な情報だからだ。そのためには双方を管轄する部門間の連携が重要となる。(以下の図で「パブリック・ソーシャルネットワーク」は生活者向け、「エンタープライズ・ソーシャルネットワーク」は社内向けを表している)

ソーシャルネットワーク運用チームと生活者・社員の関係図
ソーシャルネットワーク運用チームと生活者・社員の関係図

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