2013年度第1四半期(4~6月)の連結業績を見たが、ここでは電機大手8社の2012年度(2012年4月~2013年3月)の連結業績を振り返って見よう。
電気8社の合計は、売上高が前年比2.9%減の42兆4439億円、営業利益は27.6%増の1兆2229億円、当期純損失は前年度の1兆1431億円の赤字から回復したものの、依然として9767億円もの赤字が残った。
(各社資料をもとに作成)
売上高では、ソニー、シャープ、NECの3社が前年実績を上回ったものの、5社が前年割れ。本業の儲けを示す営業利益では、シャープ1社が赤字。ソニーは前年の営業赤字から黒字転換。増益は日立製作所、パナソニック、ソニー、NECの4社となった。電機大手8社の営業利益率は2.9%となり、前年度の2.2%からは若干上昇した。
最終損益では、パナソニック、富士通、シャープが赤字。パナソニックは7542億円の赤字と前年の7721億円の赤字に続き、大きな赤字を計上。シャープは5453億円の赤字と過去最悪の赤字額となった。
電機8社の中で、業績回復が最も顕著だったのがソニーだろう。2012年4月に平井一夫氏が社長に就任以降、事業ポートフォリオの再編や財務体質強化を実施。エレクトロニクス事業の黒字化を必達目標として取り組んできた。
だが、今回の決算では数字の上での改善がみられるが、決して手放しで評価できるものではないのも事実だ。
実際、エレクトロニクス事業は黒字化せず、ソニーの全役員が賞与を全額返上するという事態に陥ったこと、さらには2301億円の営業黒字についても、ニューヨークのマジソンアベニュー550番地の米国本社ビルで6億9100万ドルを計上するとともに、東京・大崎のソニーシティ大崎の敷地と建物の売却で423億円の売却益を計上。資産売却が営業利益の源泉となっており、本業での復活というにはまだ早い。
ある電機大手の経営陣は「うちにもニューヨークの一等地にビルがあったら、どれほど楽だったか」と冗談交じりに揶揄する。
8社の中では、4000億円規模の営業利益を達成した日立製作所の安定ぶりが特筆できるが、同社でもハードティスク事業の売却、中小型ディスプレイ事業の売却、構造改革の推進で売上高は前年比6.5%減。ハードティスク事業の売却、中小型ディスプレイ事業の売却を除いたとしても売上高は前年割れとなっている。
こうして見ると、安定ぶりを見せつけた日立製作所、業績回復を果たしたソニーにも課題は見える。日本の電機大手の業績を回復したというには、2012年度決算の時点では時期尚早だといえる。
日本の電機大手の多くがベンチマークとする韓国サムスンの2012年度(2012年1~12月)の業績は、前年比21.9%増の201兆1000億ウォン(約16兆9000億円)、営業利益は同85.7%増の約29兆500億ウォン(約2兆4500億円)となり、売上高と営業利益がともに過去最高を達成した。
「GALAXY S III」や「GALAXY Note II」といったスマートフォンの好調ぶりに支えられたIT&モバイルコミュニケーションズが大幅に伸長したのが特筆できる。
最新の四半期となる2013年度第1四半期(1~3月)も、売上高が前年同期比17%増の52兆8700億ウォン、営業利益が同54%増の8兆7800億ウォンと、引き続き好調ぶりを維持している。
営業利益率が2012年度通期で14.7%、2013年度第1四半期で16.6%と、高収益体質を誇る。日本の電機大手8社の営業利益率が2.9%にとどまっていること、最も営業利益率が高い日立製作所が4.7%であることに比較しても、サムスンの健全な経営体質が浮き彫りになるといえよう。
まだまだサムスンとには大きな開きがあることを実感せざるを得ない、2012年度の決算内容だったといえる。
見込まれる消費増税前の駆け込み需要
2013年度の連結業績見通しは、電機8社合計で売上高が前年比4.8%増の44兆4600億円、営業利益は同44.3%増の1兆7650億円、当期純利益は5900億円の黒字が見込まれることになる。8社合計の営業利益率は4.0%まで回復する見込みだ。
これはソニーが第1四半期決算発表時点で売上高の上方修正を発表。これによって売上高で1ポイント上昇している。