米国時間10日のAppleによる新型iPhone(5s/5c)の発表を受けて、Appleウォッチャーとして知られるブロガーやアナリストなどから発表内容についての反応があった。今週、恒例となった各媒体の先行レビューが出そろうと見られるが、ここでは第一印象を記したいくつかのコラムの中から気になったものを少し紹介する。
ベテラン・ウォッチャーも読み間違った「5c」の位置づけ
まず、「自分は大いに勘違いしていた」と発表当日のブログのなかで認めていたのが、Darling FireballのJohn Gruber(AppleのPhill Schillerなども一目置く、ベテランの「Appleファンボーイ」)。勘違いしていたというのは、新たに投入されることになった「5c」の位置づけに付いてである。
・Thoughts and Observations on Today’s iPhone 5C and 5S Introduction - Darling Fireball
Gruberは8月半ばに、ここしばらく続いていた「低価格版iPhone登場」の可能性に触れ、Appleが続けてきている「3本立ての品揃え/価格設定」(主に米国でのもの) を前提に、「5Cはいちばん安いポジションの製品に来る」とする予想を出していた。
・The Case for a New Lower-Cost iPhone - Darling Fireball
「いちばん安い」というのは通信キャリアとの2年契約が条件でタダで手に入るもののこと。その上に現行機種の「iPhone 5」(ただし、価格は99ドル~/2年契約)、さらに最上位機種(同199ドル)という棲み分けになる、というのがこの時のGruberの予想で、そのやり方なら「縦横比3対2の画面や、30ピンのアダプターポートがついた製品はもうなくなって、Appleにとってもアプリ開発者にとってもすっきりする」などと書いていた。
さらに、この前提に立って、「iPod Touch(16GBで229ドル)に携帯通信機能を付加したようなものなら、いま噂が出回っている市販価格350~400ドル以下(通信キャリアの割引なし)に収まるだろう」とし、いろんなニュース媒体などで散々言われてきている「中国、インドなどの新興国市場の大衆に手の届く製品」がそれでできあがる、などと書いていた。
ところがこの「5c」、ふたを開けてみれば、真ん中の価格帯(99ドル)に位置するものだった、というのはすでに各所で報じられている通り。Gruberは、中味(部品のスペックなど)は現行の「iPhone」とほぼ一緒、しかもこれまでのiPhoneにはなかった5色のバリエーションがあり、新しい「iOS 7」もついて99ドルに値下げというのだから「かなりのお買い得感がある内容」といった書き方をしている。
Gruberのコラムのなかで面白いのは、「Appleが5cを、一般ユーザー向けの主力商品に位置づけている」という指摘で、「5sがLexusだとしたら、5cはToyota」あるいは「5sがBanana Republicなら、5cはGap(そして今後も残ることになった4sはOld Navy」などと書いている。また、「5cが主力製品」という点については、「その証拠に、いまapple.comにアクセスして一番先に目に飛び込んでくる(表示される)のは、5sではなく、5cではないか」などと書いている。
5sだけに搭載される最新の部品や機能――64ビットプロセッサ(SoC)、指紋認証(「Touch ID」)、新しいカメラなどを思い浮かべると、確かにこのGruberの見方には説得力がある。「新しいものは最上位機種から(その後順次普及価格帯の製品にも……)」という流れは既に自動車の世界などでよく目にするものだからだ。ただし、消費者側にも同じように捉えてもらえるかどうかはまだわからない(価格差の開きがそれほど大きくないことや、人それぞれの好みの問題などのため)。いずれにせよ、Appleにとって需要予測が難しくなったこと(しかも今回は前例がない)だけは間違いなさそうだ。