YMOと時代を支えたシンセサイザーアーティスト松武秀樹--音楽業界のこれからを語る - (page 3)

松永 エリック・匡史(プライスウォーターハウスクーパース) 2013年10月07日 07時30分

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音楽における生(LIVE)の魅力・価値

Eric 生(LIVE)で楽しむという価値観について音楽ではどうなのでしょうか? 生はコピーできないし、場を楽しむこともできますよね。スカパーがライブの生放送をやっていて、面白いと思ったんです。生中継なので、なかなか始まらない(笑)。その場にいないのに結構、臨場感が楽しめたのは発見でした。

松武氏 ミュージシャンは生で表現できないといけないと思っています。長い歴史の中でミュージシャンは生できちんと演奏できないと価値は認められてこなかったのです。例えば、YMOは私のパートで自動演奏機を使っていましたが、ほとんどは人力です。坂本氏、細野氏、高橋氏の3人の高い演奏力に支えられていました。それまでの音楽と違ったのはオーディエンスにとって初めて見るもの(機械)がすごいことをやっているのを目の前で体験させたこと。

 実は演奏者サイドは、人間とマシンとの戦場で「そうきたか、それじゃ俺はこうしてやる」。「機械は人間に合わせることはできないが、自分がスイッチをコントロールしてテンポを調整してやる!」。私は今後もシンセサイザーを生で演奏していきますが、一生機械と人間の戦いが続くのでしょうね。それが私の仕事なのです」

音楽はテクノロジに引っ張られているのか

Eric 音楽でも人がテクノロジに引っ張られて、利用されてしまっているのでしょうか?


松武氏 私はそういうのに賛成はできません。テクノロジをある局面では引っ張らなければいけない。そのためにもシンセサイザーが何を示してきたのか。それによって何が変わり、どんな影響を与えてきたか、生と電気機械の違い、そしてメディアデモクラシー。エネルギーとアート、エネルギーと音楽の関連性を考えなければいけない。電気は無限ではない。にもかかわらず、シンセサイザーは電気が必要。そういうことまで音楽家が考えなければいけない時代になってきているのです。

 万博のときに初めて電子音楽に出会い、使い方も分からないシンセサイザーを音楽に取り入れてきました。そして今、こんなテクノロジの時代になりました。それでもアーティストは今またわざわざ昔の機械を使うのです。テクノロジーを超えた領域が音楽には存在しているのです。シンセサイザーだけではないと思いますが、実は、アナログとデジタルについて、何をもって切り分けるかという定義はありません。私にとっては生で演奏できるかできないか。生であれば弾いたり叩いたり何かをしていかないと演奏はできないもの、それがアナログと定義しています。

音楽におけるクロスマーケティングの可能性

Eric いろいろな業界をかけあわせるようなクロスマーケティングの話をすると、YMOは音楽だけではなくファッションにも大きな影響を与えています。また放送技術としても日本の衛星生中継は、YMOが初めて行いました。ファッションとの組合せについても画期的だったでした。衛星中継の際には、Herb Alpertが司会をやって米国の大スターがたくさん集まっていました。音楽からさまざまなクロスメディアに展開していくのは自然発生的なものなのでしょうか?

松武氏 衛星中継は最終的には上層部が決めたことがが、突然現場のミュージシャンに落ちてきた感じとでも言えるでしょうか。初めて聴いた時、「え、衛星中継?」とびっくりしました。CarpentersやPoliceもゲストで遊びに来ていて、「すげえことやったんだな」とメンバー皆で圧倒されていました。あれは自然発生でしょう。ファッションに関しては高橋幸宏氏が専門家だったので、そのセンスを取り入れたのだと思います。その後、プラスティックスのようにファッションアーティストがミュージシャンとして活躍するような壁を取っ払ったキッカケになったことは確かでしょう

ワクワク感の今昔、アーティストとオーディエンスのワクワク感の変化

Eric 昔のワクワク感と今のワクワク感は、どう違うと思いますか? 今の若者は車も買わないし。学生たちに欲しいものを聞くと、考えちゃう。欲しいものがない。さんざん考えたあげく「iPad」などと答える。夢がないんですよね。

松武 シンセサイザーと言ってほしいな。

Eric アーティストの人たちのワクワク感もオーディエンス側のワクワク感も変わってきているのではないかと思んです。 YMOの時代、アーティストは何にワクワクして、オーディエンスはどうしてワクワクしたのか教えて下さい。

松武氏 当時、アーティスト、演奏家、歌手、ギタリストなど、それぞれジャンルがあり、スーパースターがいました。今はそういうジャンル分けさえも危ういし、それぞれのジャンルにスーパースターがいないように感じています。それと、昔は歌謡曲、いわゆるポップスだと思うんですが、それが「Jポップ」という言葉が出現してから何かそういうものが壊されてきたと感じています。AKB48など今のスターを否定しているわけではないが。やはり歌詞やメロディーラインでワクワクするもので、「やっぱりいいな。良い歌詞だな」と思うことがある。そういうものが不足しつつあると感じています。

Eric メロディーラインや歌詞の良さという意味では、最近の日本のヒップホップシーンは熱いと感じています。例えばライムスターは歌詞も素晴らしいメッセージを持っていますし、米国のヒップホップの物まねではない独自の日本のサウンドも持ち合わせています。素晴らしいアーティストは登場してきている。われわれの世代がもっと視野を広げれば新たな可能性が出てくるのではないでしょうか?

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