16年目を迎えた国産グループウェアベンダーのサイボウズ。創業以来、ウェブベースのグループウェアを手掛け、中堅・中小規模組織向けの「サイボウズOffice」や大規模組織向け「サイボウズ ガルーン」をはじめ、クラウドサービス「cybozu.com」「kintone」など、さまざまな形でグループウェアや関連ソフトウェアを提供している。
今回は、クラウドへの取り組みや海外への再進出、そして独特の社風などについて、代表取締役社長の青野慶久氏に聞いた。
グループウェア関連に事業を絞りつつクラウドに進出
サイボウズ代表取締役社長 青野慶久氏
最近、同社が力を入れているのがクラウドだ。2011年11月21日にリリースした企業向けクラウド版グループウェアのcybozu.comは有料ユーザー4000社強を達成、このうち3割ほどがオンプレミスからの移行組で、残りは新規ユーザーだという。
「リリース前には、パッケージ版のユーザーをクラウド版が持っていくのではないかと思っていましたが、蓋を開けてみればパッケージ版の売れ行きはほぼ変わらず、クラウドが伸びてきている状況です」と青野氏は説明する。
現状ではこれまでの投資を回収し切っておらず、事業単体では累積赤字を解消していないというが、投資の比重が変わってパッケージ商品については投資額が下がりつつあり、全体としては悪くない動向にあるとのことだ。
「当社はずっと黒字経営を続けてきています。前年度には連結売上高が落ち込んでいますが、実は単独で見ると特に落ちていません。2005年から2006年にかけて9社をM&Aし、100億円近くまで売り上げを伸ばしていたのですが“やはりグループウェアに注力しよう”と方針転換し、既に7社を売却済みとなったためです」(青野氏)
一方、学生などのグループ、また企業間プロジェクトなどのユーザーを主なターゲットとしたグループウェアサービス「サイボウズLive」ではグループあたり1Gバイトまで無料という施策を採用、サークル活動などでの利用が多いという。
「サイボウズLiveからエンタープライズまで一連の流れでグループウェアのラインアップを持っているのがわれわれの特徴です。こういう会社は、グローバルで見ても珍しいと思います。われわれの考えとしては、グループウェア市場は全体として横ばいですが、ユーザーからするとオンプレミスでの運用は手間のかかることです。新規ユーザーだけで見れば、既にサイボウズOfficeの5倍くらいのユーザーがクラウドを利用し始めており、クラウドへの流れは今後も継続するものとみています」(青野氏)
「kintone」で新たな可能性に気づく
現在、サイボウズが戦略的かつグローバルな商品として展開しているのが「ウェブデータベースサービス」と銘打ったkintone(キントーン)だ。
「顧客リスト」「レンタル機器管理」「顧客サポートパック」「ワークフローパック」といったアプリをアプリストアから選んで使うことができるほか、グループウェアの標準にない業務アプリを手軽に作って実行でき、もちろん業務の変化に応じてアプリに手を加えて使っていくことも可能となっている。
グループウェアの持つ汎用的な機能ではカバーしきれない、個々の企業のニーズに応じた機能を実現するためのツールだ。もちろん数あるユーザーの中には、さまざまな工夫でグループウェアの標準機能を業務アプリのように活用している例もあるが、あまり一般的ではない。そこで、ユーザーが自らの手で、あるいはシステムインテグレーターに委託して業務アプリの開発ができるような環境を作ったというわけだ。
「よくGoogle Appsと比較されますが、Google Appsだとチームで仕事をするには足りません。顧客情報とか、受信したファクスを管理するような用途には使いづらいのです。Google App Engineなら自由度が高いですが、アプリ開発はかなり本格的な作業になってしまいます。kintoneなら、チームワークに必要なツールはそろっており、すぐ使えます」(青野氏)
このkintoneの提供を通じ「クラウドは会社を越える」と気付いたという。kintoneには「ゲストスペース」という機能があり、特定のアプリやデータに限って社外ユーザーが利用できるようになっている。