「ともに働く」を重んじ、社内でもチームワークを
サイボウズは、社風のユニークさでも知られる企業だ。青野氏は、社長でありながら育児休暇を取得して新聞などに紹介されたこともある。ただし、ちょっとした裏話つきだ。
「実は、あまり育児休暇を取る気はなかったんです(笑)。ところが、文京区の区長が自治体首長として全国で初めて育児休暇を取得して注目を集めまして、その子供の誕生日が、たまたま僕の子供と同じだという縁で知り合いになり、『ぜひ青野さんも育休取ってよ』と頼まれて、やってみたという次第です」
青野氏は1971年生まれ。社会に出た頃には、まさにバブル崩壊による不景気が始まろうとしていた、そういう世代だ。
「約20年間、仕事人間でやってきたけど、これまでずっと不景気でした。人口が逆ピラミッド状態になってしまっているので致し方ないことでもあるのですが、このことは実に大きな問題なのだなあと思うのです」
こういった考え方から、育児休暇に代表される福利厚生を充実させている。その結果、同社では出産で辞める人はおらず、誰もが育児休暇を済ませれば職場に復帰してくるという。
「中には“2周目3周目”という人もいます。こういった福利厚生は経営の重荷になる、コストになるという考えの人もいますが、そうではないことを示したいと考えています。多様な人材がいることで新しい発想が出てくる、イノベイティブになる、そういう効果があるのです」(青野氏)
社内制度としてはほかにもユニークなものが数多くある。例えば退職した社員が6年間は戻ってこられる「育自分休暇」制度は、外で学んだことを持ち帰ってくることを期待したものだ。その逆に「独立支援制度」もあり、サイボウズをキャリアのステップとして使いたい社員にも対応している。
「“ともに働く”ということを重んじる会社、そんなブランドを目指しています」と青野氏は言う。そのために人事制度を特に重視し、人事制度には手を加え続けているという。
「直接売り上げするのではない人が社内にいっぱいいます。例えば人事部には『感動課』という部署もあり、彼らは社員を感動させるのが仕事です。陽の当たらない仕事をしている人をフォーカスするなどの仕事をしています。働いている人が求めるのは給与だけではない、直接的に働く喜びを提供できないか、と考えて作ったのです。この感動課は最近、社外にも認知されるようになってきて、インテルからも教えを受けたいといって来たりしました」(青野氏)
「ともに働く」という枠は社内にとどまらず、社外にも広がっているようだ。顧客との関係も、しばしば密なものとなっており、顧客からは、サポートなどで担当者を指名してくることもよくあるという。
「ユーザーは5万社もあり、そのすべてではないですが、密なところは密な関係ですね。またユーザー会も盛んで、次のバージョンの仕様についてユーザー同士が議論し、時には意見対立することもあります。こういった姿を、新しいチームの形だと思ってもらえれば幸いです。皆が同じ方向を向いていて、そこにクラウドの力が加わって、未来が楽しくなる、そういう形を示していきたいと考えています」(青野氏)
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